私はただ固く目を瞑っていた。両肩の上に乗っている煉獄の手は衣服越しでも温かくて、私のからだを包んでいるみたいに大きかった。初めて男の人にきちんとからだの一部を握られているのだという感覚があった。目を瞑っているせいで、視覚以外の全てがより鮮明に、感覚が鋭く有る気がしたけれど、それは私の脳みそが麻痺して起こった、間違った感覚なのかもしれなかった。一度お父さんの焼酎に誤って口を付けてしまったあと、こんなふうに感覚が研ぎ澄まされたような気をおこしたことがあって、今感じているものもそれに似ていた。煉獄の唇は丁度、私の口角を狙った所に優しく落ちてきた。私は、彼のそれがきちんと口の真ん中に着地しなかったことなんかどうでも良かった。二人の足元に敷き詰められている砂利が、小さくこすれて一度鳴った。それ以外の外界の音を私の耳が拾う事は無かった。からだの中の血液の巡り、心臓のリズムの狂い方、皮膚が触れ合った時の無音、それらが私の頭の中いっぱいに運ばれた。煉獄は男の人のくせに、私の足が眩み、地面に直立して立っているのだということを忘れてしまいそうな程良い香りがした。私はそれにまだ暫く包まれたいと思いながらも、緊張して固くなった肉体をはやく開放してしまいたいとも考えた。自分の腕の先についた指先がぴんと伸び固まっている感覚に気が付いて、ゆっくりと手を握った。


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