甘露寺に肩を貸してもらい項垂れている名前の手をとって自身の元に引いた。彼女も俺の行いに従ってこちらへ身を移動させようとしたが、それを甘露寺の一言が阻止をした。「煉獄さん大丈夫よ、名前ちゃんは私が看病するわ」甘露寺からは高熱を出した名前の面倒はしっかりと自身が診るのだというまっすぐな熱量が感じられた。その瞳の熱にはいくらかの嫉妬心も見て取れる。

「否。その様子だともう、肩を貸してもらっていながらも歩くのが辛いのだろう。なので俺が抱いて彼女の家まで送り届けるので甘露寺、君は此処までで大丈夫だ。有難う。後の事は任せてくれ」
「いいえ、名前ちゃんは親友だもの、途中で放ったりなんて出来ないわ」
「別に放るわけでは無いだろう、俺が代わると言っている」
「それに私、力だって自信あるんだから。名前ちゃんを抱いて帰るのだって難しくないわ。ホラ」
「む、名前、」
「ね!名前ちゃんくらいならへっちゃらで持ち上げられるのよ。だから大丈夫煉獄さん、心配しないで頂戴!」
「駄目だ。早く帰らねば彼女の具合が悪化するかも知れない。俺が連れていこう」
「私だって早く帰れるわ。それに名前ちゃんは任務帰りなのよ」
「だからどうした」
「汗もかいているし、服を着替えなきゃ!煉獄さんではそれに手を貸せないでしょう?」
「……………」
「女同士だったらできるわ。身体も拭いてあげられる。まかせて!」
「……………」
「煉獄さん有難う。名前ちゃんも心遣いは嬉しいと思うわ、でも今日は私が行くわね。親友だもの、困っている時は絶対に力になりたいの」

名前とは同じ布団で寝た事があるし肌を見た事も触れた事もある。きっと甘露寺よりも俺の方が名前の身体は知っている。という心の内を打ち明けるのには不適切な場面におもわれたので思い止まった。

「......」

そうして甘露寺が名前を横抱きに離れて行った後、何となく眺めた足元の水溜まりに映った己で気が付いた。甘露寺の目に宿っていたと思われた嫉妬の色は、ただ反射した自身の炎だったのである。



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