「ダイエットしてスタイルも前よりは良くなった筈だし、隣に並んでも恥ずかしくないようにお洒落するのだって怠らなかった。爪先の手入れだってしっかりやってネイルも毎回塗り直して、下着だって前のノンワイヤーの楽チンなものは全部捨てて、窮屈だけど胸が綺麗に見えるブラにしたし、上下セットデザインの高いやつ買った。マツエクのメンテナンスも続けてた。美容室も月に一回行ってシャンプーもトリートメントも普段使ってる三倍はする値段のものでヘアケアしたの。いつ撫でられても良いように。猫背だって私の人生に付き物な姿勢だったけど、直したんだよ。言葉遣いも丁寧になるよう心掛けたし…それで若干、口数少なくなっちゃったかもしれないけど、あまりペラペラ喋り倒すよりは良いでしょう?それに私は聞き手に回る事に務めたから、あまり多くの言葉を喋る必要は無かったしね。可愛く見える仕草も研究して……。わたし、実際うまく可愛い女の子になれていたと思うんだけどな。その全てが無駄だったみたい。もしくは努力が足りなかったのかも。煉獄。わたしに何が足りないのかな?」
「一つずつ訂正させてもらう」
「うん」
「まず、ダイエットなんてしない方が良かったと思うぞ。今でも勿論君は魅力的だが、健康的に肉が付いている君のほっぺたの膨らみとか、実際とても愛らしかった。隣に並んで恥ずかしくない格好うんぬんというのは、彼の方が言ったのか?そうでは無いにしろ、俺は君がたとえ組み合わせの間違えた服装だろうがパジャマ姿だろうが俺ならなんだって構わないでそばに置いておきたい。ネイルとマツエクとやらのことは正直男には分からない問題だ。だが俺は名前の何も塗っていない爪の、淡い肌の色が好きだし、睫毛を付けたことで君の気分が良いのならそれで構わないだろう。下着はそのものに欲情するのではなく、あくまで大切なのはそれを身につけている人間の方だろう?充分魅力的なのに、名前がそれ以上飾る必要がどこにある。髪だってそうだ、俺は彼と違って、君の髪に触れた事は無いが。姿勢だって今のような話し方だって、君の自然的な全てのそれを俺は愛しく思っている。変えるなど...名前の個性を壊している。だから、そのままで良いだろう?無駄も努力の足りなさなどもあったものか。もう既に、君はとんでもなく可愛らしいぞ」
「煉獄、私のこと好きじゃん」
「そうだな。この際もう隠すことはあるまい」

煉獄は自分で注文したイチゴオレのグラスが空になっていることに気がついて、まだ一口も口を付けていない名前のオレンジティーに手を伸ばし奪った。彼女は背筋を伸ばす事をやめて、萎むように背中を丸めながら煉獄の上下する喉を無心で眺めた。




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