雨粒が窓ガラスに当たり、薄暗い室内にその影が無数にできた。名前は窓際まで歩き腕を伸ばして、影を自分の腕に乗せた。真っ白な皮膚の上に数えきれない程の黒いシミが浮かび上がったようで、ゾワゾワと肌が粟立った。背後のベッドで煉獄が身動ぎをした為か、シーツに肌が擦れる優しい音がした。

「名前」
「うん?」
「戻って来い」

鼻を隠し、目の下まで布団に収まっている煉獄が、手招いて彼女を呼んだ。煉獄のはっきりしない声色にまた肌の表面が刺激された気がした名前は、静かに肺の中の空気を出し切った。体内の面積が空気の分減って、キャミソールの紐が滑って落ちていった。ベッドに戻ると、室内で佇んでいた名前を訝しく思った煉獄が、体に腕を回しながら頭を撫でてくれた。ベッドの中は甘い余韻に満たされていて暖かかった。

「どうかしたのか」
「腕に黒い斑点が、いっぱい出来た」
「それは怖い夢を見たな」
「夢じゃないよ。さっきまでの現実」
「ふむ」

腕が持ち上げられた。足先をほんの少し彼の方に動かせば、充分に温まった体温に触れることが出来た。煉獄は名前の肌の点検に必死で、外の雨の気配に気が付いていないようだ。眼を閉じた。視界が遮断されて、煉獄の穏やかな息遣いだけが僅かに耳に届いていた。



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