額に煉獄への告白文を書かれる

「ぎゃははは!派手だなあなまえ!」
「次は、私の番ですよなまえさん。お顔をこちらに向けて下さい」
「……ハイ」
「かっ可愛いわなまえちゃん…すごく!良いわ!」
「……蜜璃ちゃんわざと負けてるよね」

本日これは何回目か。頬にしのぶの持つ筆が触れた。なまえは隣で頬を上気させてはしゃいでいる、蜜璃に目をやって溜息を付いた。宇随、しのぶ対なまえ、蜜璃という組で羽子板に興じているものの(義勇は縁側で膝に猫を乗せてうとうとしている。義勇と組みたいと申し出たがしのぶに却下された。)蜜璃は全然羽を打ち返せない。なまえが間一髪、地面ギリギリで拾っても、向こうからは確実に豪速の羽が返ってくるものだから、一人で全てを拾う事は出来なかった。蜜璃は「どうしてかな。羽子板苦手かもしれないわ」と頬を赤らめて可愛らしいので、なまえはあまり強く言えない。

「そして、わざと勝ってるよね。蜜璃ちゃん」

そうして負けた組の内、じゃんけんで負けた方が相手二人に一筆ずつ描かれることになっている。蜜璃は一度も負けていないから可愛い顔のままだ。いや、多分描かれても可愛いのだろうけど。

「じゃんけんに、わざとなんてねーよ。ホラもう一戦いくぞ」
「えー!また!」
「一筆ってところが大変で。中々なまえさんのお顔が完成しないんですよ」
「何完成って。二人とも私の顔に何描いてるの」
「まだ見せない約束ですから…ふふ」
「………」
「なまえちゃん!次は足を引っ張らないわ!」
「まあまあ、蜜璃さんはその調子でお願いします。なまえさんから一手目をどうぞ」
「…こうなったら勝つしかない。蜜璃ちゃん」
「よーし!頑張るぞォ!」

4人が定位置にばらけて、なまえは羽をと板を構えた。

「遅くなった!!!」

なまえは背後から聞こえる声に内心どきりと胸が鳴った。ころりと羽が足元に落ちてしまう。煉獄だ。彼も今日の羽子板遊びに参加する予定だったのだ。なまえは激しい戦いで乱れた髪を手で撫でつける。宇随が小さく噴き出す声が聞こえた。やっと頼もしい面子が現れてくれてほっとした。そして煉獄と組んで、ちょっといい感じに仲が深まってくれたらいいなあなんて、なまえは思っている。蜜璃がきゃーっと高い声を上げてしのぶの方へ寄って行ったけれど、一瞥しただけで、煉獄へ向き直ってなまえは少し照れながらも挨拶をする。

「煉獄さん、今年もよろしくお願いします」

珍しくきちんと、軽く頭を下げてみる。煉獄は、藍色の素敵な着物に身を包んでいる。

「………」
「どうかしましたか…あっ」

なまえが顔を上げると、煉獄がぴしりと固まった。額に視線を感じてなまえは、自身の顔は今、墨だらけであるという事を思い出した。煉獄のきらきらしさに気を取られて、忘れていたのである。一体どんな仕様にされたのかも分からない。宇随が大笑いしていた事を思い出して、なまえは顔がぶわっと赤くなった。

「ご、ごめんなさい煉獄さん。私、新年早々落書きだらけで…」
「あ、アア…。自分で書いたのでは無いのだな?」
「えっ?」

一体自身の顔には何が描かれているというのか。煉獄の頬も心成しか桃色に染まっているように見えて、きっと人が見て羞恥心を煽るような何かを書いたのだと、なまえは宇随としのぶに鋭い視線を突き刺した。二人はにやにやと笑っている。蜜璃だけは終始声にならない声で騒いでいる。音程が高すぎて聞き取れない。

「なまえお前、」

宇随らになんと言ってやろうかとなまえが掌を握りしめて拳を作った所で、意外にも第一声を発したのは義勇だった。起きたばかりだというのに目を丸くしてこちらを見ている。なまえは、訊くなら彼だと思った。もう一度煉獄を一瞥すればやはり気のせいでなく、頬を染めている。なんなのだ一体。私の額には、一体何と書いてあるのだろう。






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