噛み付くようなキス。なんてなま優しい響きだろう。
彼の場合、ような、では済まさない。比喩などではなく本当に噛み付いてくる。
口づけた唇は勿論のこと、体の中で柔らかい部分なら何処にでも。キスの鬱血痕だけではなく、たまに噛まれた所が小さな傷になることもあった。


「は…、あ、あぁっ…、」


口から情けない声が漏れる。熱く濡れた舌が首筋を這っているせいだ。
背中だか腰だか頭だか、何処からなのか分からないけれど恐らくその辺りから、じわじわと全身に甘い痺れが広がっていく。

彼は、あまり唇にキスをしたがらない。
いつだったか、「そんなもん女にしてもらえ」とか不貞腐れたように言われたような気がする。こちらからすれば応じてくれるし、ねだれば躊躇いも無くしてくれる癖に。


「けぇ、さ…ぁん…」


ちゅるちゅる、と吸い付かれて、なんとも切なくなってしまう。触れられるどころか見向きもされていないはずの下半身は、情けなくも既に元気にされてしまっている。
蕩けるような感覚が気持ち良くて、しかし物足りなさが切なくて。
すると無意識の内に抱きしめていた彼の頭が動きを止めた。


「は、っあ、あ…やだ、けぇ…さんんっ…!!」


それはただ一瞬のことで、息をつく間もなく首から痛みが湧き出てきた。乱暴に彼の歯が食い込んでくる。
普通なら痛いだけの行為が、自分にとってはどうしようも無く気持ち良い。


「やだ、じゃねえだろ? 変態マゾガキ」


低く罵るその声も更に欲を掻き立てるだけ。
投げつけられた言葉通り、残念ながら自分はあまり褒められた性癖を持っていない。自覚はしていたが、客観的に見てそれは随分とだらしないなと思う。曲がりなりにも自分は男、であるからには。


「虐め甲斐のある誘い文句くらい考えておけ」


必死に隠して押し殺して、抑圧してたものを、彼はいとも簡単に裸に剥いて満たしてしまう。
恥ずかしさと情けなさと嬉しさに抱かれているうちに、気づけば彼にひどく依存している自分。まったくもって格好悪い。
あまりの女々しさに泣きそうになる。いや、彼には何度となく泣かされたが。


「っ、オレ…ばか、だから、ぁっ……そーゆー…の、分かんないよぉ…っ……!」


楽しそうにまっすぐこちらを見下ろしながら、触れてくる。ただ指で首筋を撫でられているだけなのに、艶めかしい手つきと錯覚してしまう。
噛みついた跡に触れながら、彼は何を考えているのだろう。涙目で見上げたその瞳は、見間違いでなければひどくご機嫌なようだ。


「ああ。知ってる」


この分だと今夜はまだまだ沢山虐めて貰えそうだ。喜ぶべきなのか、覚悟を決めるべきなのか。







***

続きそうで続かない。毛さんがチャラ王君をぺろぺろちゅっちゅしてるだけ。
ぬるくだけどマゾガキチャラ王君書けて満足。




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