稲荷崎高校の一大イベントといえば、男子バレー部の試合応援
元々スポーツ系はどれも特化してる学校なんだけれど、バレー部は群を抜いて強豪
現に去年はIHも春高も全国3位と好成績を収めている
そんなバレー部には専属の応援団がついてるんだけれど、これがまた凄まじい
良いプレーには賞賛を、弱腰なプレーには罵声をと、徹底したプレッシャーを与える彼らは人呼んで稲荷崎応援団
そのままとかそういうツッコミはいらないです
「ナイスキー!侑ゥウ!!!」
応援団の中でもかなり大御所なおじさんがコート上の侑くんに声をかける
確かに侑くんはかなりバレーが上手
セッターというポジションらしいけど、彼が上手にボールを回してチームを動かしてるのが見てわかる
「すごいね、みんなバレー上手」
「当たり前でしょ、あの稲荷崎のレギュラーなんだから」
「でもさっきのブロックも凄かったよ!えーっと…あ、角名くん!」
治くんに試合を見に来てと誘われて、咲ちゃんと二人で見に来たんだけれど、これだけうちの生徒がいれば私が来たところで治くんとの関係も疑われる心配はないだろうし一安心
それに、この試合に向けて色々バレーの事を勉強して来たから試合がとても面白い
「侑くんも角名くんもいいけど、治くん見たら?わざわざ誘ってくれたんだし」
「咲ちゃんってば、またからかって」
「だって誘われて嬉しそうだったじゃない」
「そ、それは…まあ」
バレーに本気で打ち込んでるからこそ、私みたいな何も知らない人が見に行っていいものかと迷ったりもしたけれど、治くんの事を知るチャンスだと思い切って来てみた
けれどそれは正解だったみたいで、コート上でバレーをする治くんはとても活き活きしている
侑くんが上げたトスを迷いなくそして豪快に放つその光景は今まで見たどんな選手よりも輝いて見えた
「かっ、こいい」
無意識の内に出ていた声
治くんはかっこいい
それこそ普段からとてもかっこいい
けれど、バレーをしてる時はもっとかっこいい
真剣な表情も、逞しい身体も、ボールを求めるその貪欲さも、そして時折垣間見える野生動物のようなギラつく瞳も
全てが学校では見ることのない治くんでドキドキした
その時、綺麗にスパイクを決めた治くんがふいにこちらに目を向けた
たった一瞬だけれど治くんと目が合った気がして一気に心臓が跳ね上がる
「(だめ、こんなのまるで)」
治くんから目を逸らせない私を見た咲ちゃんがにんまりと微笑んでるなんて露知らず、熱を持った頬に手を当てた
こんなのまるで
恋してるみたいだ
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