翌日びくびくしながら学校に来たけれど、侑くんの姿は見えない
よかった、バレてなかったんだ
ほっとして靴を履き替えて教室へ向かう
「おはよ琴葉」
「咲ちゃんおはよ」
自分の席に荷物を置いて咲ちゃんと談笑してると、クラスの前を朝練終わりのバレー部二年生の集団が通った
そういえば治くん大会近いって言ってたし、練習厳しいんだろうなあ…
「あれ、宮治がいない」
同じように集団を見ていた咲ちゃんが不思議そうな声を出した
そう、バレー部の集団に何故か治くんだけいないからだ
「(どうしたんだろう…風邪?)」
心配になって携帯を確認すれば、数時間前に「朝練行ってきます」との文字
やっぱり学校には来てるんだと思うけど、まさか怪我したとか?!
良くない想像をして内心慌てていると、廊下で侑くんが「おー、サム早かったなあ!告白どやった?」なんて叫んだのが聞こえた
そして遅れて集団に合流した治くん
なんだか機嫌が悪そうで、眉間にシワがよっているみたい
「喧しい、いちいち叫ぶなや」
「なんやOKしたんか?」
ご丁寧に私のクラスの前でこのやり取りをやってくれるのでなんだかいたたまれない気持ちになる
一応治くんとは付き合ってるんだけれど、公表してないし、そんな状況だから誰か別の女の子が治くんに告白するのも仕方ない
それに私は治くんの事が好きなのかと聞かれてもうまく答えれる自信はない
確かに治くんの事はかっこいいなとは思うけど、それはファン心理であって恋愛のそれかと聞かれると難しいところ
「せえへんわ」
「なんやつまらんなあ」
治くんがぶっきらぼうに言い放って自分のクラスへ歩いていく
次第に遠くなる話し声
よかった、嵐が過ぎ去ったみたい
咲ちゃんと向き合い、今日の課題の話でもしようとした時思わず動きを止めてしまった
理由は明快、先程のバレー部の会話だ
わざわざ私のクラスの前でこの会話があったのは偶然?そもそもちょうどのタイミングで会話を始めたのは侑くんだったはず
その侑くんには昨日勘づかれてる可能性があるんだよね?
「え、侑くん怖い」
「え?」
「ねえ咲ちゃん、侑くんてどんな人だっけ」
「何を今更、去年も中学の時も同じクラスだったでしょ、一言で言うと性格悪い」
勘違いじゃなければ侑くんは気がついてる
わざと私の目の前で揺さぶりをかけに来たのだ
だからさっき立ち去る前に目が合ったのか
うん、侑くん怖い
しばらく警戒しよう、そう決意した
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