国語の授業中
今日は平安時代の恋愛がテーマの文章が題材
「この頃は身分の差により報われない恋愛も多くありました、一部ではそういった恋愛こそが美しいとまで言われていたそうです」
身分違いの恋
そんなのまるで私達みたいだなと思ってしまった
学校でもバレー界でも有名人で、キラキラした世界に住む治くんと、至って平凡な私
誰がどう見ても不釣り合いだし、私自身も釣り合ってるなんておこがましいこと思ってないけれど、日に日に治くんに惹かれてるのは確かで、このままだと本当に好きになってしまいそうだ
「大方こういった身分違いの恋愛は第三者の介入により破局します」
先生、今すごいセンチメンタルなんで言葉選んでほしかったです
ド直球な言葉に少し苦笑いしていると、ふと窓の外に体育の授業をしているクラスが見えた
その中には最近の悩みの種の治くんもいる
「(楽しそう)」
多分バレー部の友達だろうけど、その子とケラケラ笑いながら何かを話している治くんは年相応の高校生の男の子
いつも見る大人びた表情とは違って、なんだか可愛らしい
こういう時窓際の席はラッキーだと思う
「(あ、侑くんだ)」
どうやら2クラス合同の体育は侑くんと治くんは同じ授業らしい
侑くんが治くんに向かって何かを言ってるようだけど、治くんはそれをあしらってるみたい
ふふ、やっぱり仲いいんだ
窓の外から先生に目を移すと、黒板の文字がとてつもなく増えていて慌ててノートに写す
今度のテストに出る範囲だから書き損ねるわけにはいかないんです!
あわあわしながらもなんとか写し終え、先生が新しい段落を読み始めたのでチラリとグラウンドに目をやる
パチッという効果音が正しいのかは分からないけど、本当にそんな音がつきそうなほどタイミングよく治くんと目が合ってしまった
「(え、何で?!)」
突然のことに驚いてポカンとしていると、治くんが少し微笑んだ
けれど、次の瞬間、治くんの表情を見た侑くんが不思議そうにこちらを見てることに気がついて黒板に視線を戻す
「(どうかバレてませんように!)」
侑くんにバレた日には最後、1時間もあれば全校中に治くんと付き合っていることがバレる
そんな馬鹿なと思うかもしれないけど、侑くんはやりかねない
現に何度かそういう現場を目撃してるから余計に想像出来てしまって冷や汗が出る
お願いします、侑くんから見えてませんように!
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