稲荷崎高校のアイドル的存在の宮治くんはバレー部のレギュラーでしかもかなりの実力者
双子の侑くんとのコンビネーションは息ぴったりで、全国でもかなり有名人らしい
そんな彼に告白されたなんて夢なんだろうか、いや、夢に違いない
だって私取り柄もないし可愛くもないし…ダメだ、自分で言ってて悲しくなってきた
とにかく、あの宮治くんに告白されたなんて都合のいい夢に違いない
宮治くんは中学の頃から好きだったなんて言ってくれたけど、そもそも中学の時に何か接点があった試しが無い
そうだこれは夢だ、神様ありがとう、こんな贅沢な夢を見れて幸せです
「琴葉ちゃん、おはよう」
前言撤回、夢じゃないらしい
目の前にはポカンとしている友達の咲ちゃん
そりゃあそんな顔にもなるよね、なんせあの宮治くんがわざわざ別のクラスの、しかもパッとしない私の所までやってきて挨拶をしてるんだから
「お…おはよ」
「いつもこの時間なん?」
「この時間?」
「登校時間のこと」
聞き返されたのがおかしかったのか、宮治くんはクスクスと笑いながら言葉をかけてくる
頷いた私を見て「そっか、朝練ない日は一緒に行こや」なんて言うから周りのクラスメイト達もザワザワしてる
「治、何してんの」
「おー、今行く…ほなまたな、琴葉ちゃん」
「う、うん…またね治くん」
満足そうにはにかんでから友達の所へ戻っていく治くんをポケーっと眺めていると、我に返った咲ちゃんに肩を掴まれた
しかも前後に揺すられるオプション付き
激しめのアトラクションに乗った気分だ
「ちょっとちょっと!なんで宮治と親しげなのよ?!」
「いや、なんと言うか…色々ありまして」
「色々?」
不思議そうな咲ちゃんに「実は告白されて付き合ってます」と、こっそり耳打ちした
付き合ってるなんてバレたら治くんの熱狂的なファン達に刺されてしまいそうだ
現に咲ちゃんも言葉にならない悲鳴を上げてる
「琴葉、アンタ一生分の幸福使い切ったよ」
「不可抗力すぎない?」
「だってそんなシンデレラストーリーある?!こんなの少女漫画でしか見たことないわよ」
「ほら、気の迷いかもだし…というかからかわれてるのかもだし」
「いや、あの目は本気だった」
「目?」
「気づいてないの?」と言う咲ちゃんに首を傾げる
何のことか検討もつかないので教えてと言わんばかりに咲ちゃんを見つめると、呆れたようにため息をつかれた
「宮治の目、琴葉を見る目が好きですーって滲み出てたから本当に好きなんだなって」
「えっ」
「やっぱり来世分の幸福も使い切ってるわよ」
「まさかの来世」
咲ちゃんに言われた事がなんだか少し恥ずかしくて、頬に熱が集まってくるのを感じる
からかわれてるだけなのかもと疑ってしまったけど治くんは案外真剣に想ってくれてるのかもしれない
流れで付き合ってしまったけど、ちゃんと治くんのこと知らなきゃ
だって彼のこと全然知らないもん
そんなことを考えながら先程見せた治くんの眩しい笑顔を思い返していた
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