この前観に行ったバレー部の試合
その時に見た色んな表情の治くん
その姿が頭から離れないまま一週間が過ぎた
付き合い初めて早一ヶ月
ちなみにここまで秘密の関係は貫いている
恋人らしいことと言えば一緒にお昼食べたり、たまに朝練がない日に近くの駅で待ち合わせしてさも偶然を装って登校したり、あとは毎日メッセージを送りあってることくらい
私からしたら全部が新鮮でとても毎日がキラキラしているんだけれど、治くんはどう思ってるんだろう
「なんや、ため息ついて」
「えっ」
私のため息を聞いてか、同じ委員会の北先輩が声をかけてくれた
こっそりため息をついたと思ってたんだけど、想像以上に大きかったみたいで恥ずかしい
「あ、あの北先輩」
「ん?」
「先輩ってバレー部ですよね?」
「せやけど」
この前の試合で北先輩もコートに立ってたのはびっくりした、まさかバレー部だったなんて知らなかったけど主将らしい
噂によれば宮兄弟を黙らせることが出来る唯一の存在とか…すごい
「どんな感じですか、バレー部って」
「…橘、言いたいことあるならハッキリ言い、具体的に何が聞きたいねん」
「(ヒィィ!北先輩やっぱり鋭い)」
びびってしまったものの、意を決して北先輩と向かい合う
今日は他のメンバーはいないから誰かに聞かれる心配もないしチャンスだ
「治くん…宮治くんの事なんですけど」
「治?」
「治くんて部活中どんな感じなのかなと」
それを聞いた北先輩は何か勘づいたのか、少し黙ってから目を伏せた
「好奇心旺盛、大人しいけど根は侑と同じ、負けず嫌い、食いもんのことばっか考えとる
こんなとこや」
「な、なるほど」
治くん大人っぽいと思ってたけど、意外と子供っぽい部分もあるんだ
新たな一面にびっくりしていると、北先輩がじいっと私を見つめてる
「橘は治と付き合っとるんやろ」
「!」
「隠さんでええよ、言いふらさんし」
「えと…付き合ってるといっても全然気持ちがはっきりしなくて」
治くんはあんなにはっきりと好意を向けてくれてるのに、私は全然何も返せていない
治くんの事が好きな女の子からしたら贅沢すぎる悩みだと思う、本当に申し訳ない
「でも好きなんやろ、治の事
顔めっちゃ赤いで、橘」
「なっ」
「冗談や」
私の反応が面白かったのか、北先輩は少し楽しそうに微笑んでいた
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