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子狐の妖力を感じたおばあちゃんが走ってきてまんまと捕えられた子狐二匹

今は大広間で陰陽師達や親族が集まった状況下で子狐が注目を浴びてる


「なんと、かの妖狐か」

「巫女様に仕えたあの伝説の…」

「しかしなんだか小さくないか…?」


ザワザワしてる陰陽師達を見て子狐が呆れた目を向けた


「何回言えば気が済むねんな」

「俺らは主の神力によって姿を変えるんや」

「幼体なんは主が未熟やから」

「そういう事やからはよこれ解いて」


拘束されてるためか不機嫌そうな二匹
私は両親の横で座らされている

ジタバタしてた二匹は解放されて伸びをしてる
こう見ると本当にただの狐だ


「主とは?」

「そこのちびっ子や」

「まさか七歌様か」


再びザワザワし始めた一同にキョトンとした二匹はぴょんっと跳んで私の前に着地した
そして私の顔を覗き込んでくる


「自分七歌って言うん」

「う、うん」

「俺は治」

「俺は侑」

「「巫女に付けてもろた名前や」」


金狐は侑、銀狐は治という名前らしい
二匹とも私の周りをぐるぐるしてる
なんというか、妖じゃなかったらとっても可愛らしい

ちょこんと私の前におすわりした二匹はじいっと私のことを見つめてる


「私契約してない」

「ほんなら契約してや」

「血くれたらええよ」


尻尾をふりふりしてる二匹
周りの陰陽師達はざわつきながらも私の言葉を待っている様子

おばあちゃんを見れば、頷いて小刀を手渡してくれた


鞘から小刀を抜いて指に押し当て少し引くとチリっとした痛みの後で遅れて赤い血が滲む
その血を目の前の二匹が舐めた

途端、ポンッと音がして二匹が煙に包まれる


「なんや?!」

「七歌様は無事か?!」

「私は大丈夫です」


煙が晴れたとき、目の前にいたのは二匹の子狐じゃなくて、二人の同い年くらいの男の子二人だった
ただし狐の耳と尻尾が生えた人間とは言い難い外見だけれども


「変化しただと」

「俺らの得意分野や」

「よろしゅうな、七歌」


嬉しそうに手を握ってきた侑と治に私は思わず頷いてしまった
突然の事すぎて頭が追いついてこなかったけれど、どうやら私はこの二匹の主となったらしい


響と美嘉も招集されていたためこの光景を見ていたらしいけれど、二人とも子狐の妖気にあてられて目を回していた


「子狐と言えど流石は巫女の式、凄まじい妖気や」

「この妖気を打ち負かすほどの神力が七歌様におありなのか」

「晴明様の血か神子様の血か、いずれにせよ流石は土御門の跡取りやな」


大人達の会話を他所に子狐達と会話をしていた私にはそんな言葉たちは届かなかった


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