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安倍晴明、土御門家の血は代々受け継がれてきた
しかし受け継がれてきたのは血だけであった
安倍晴明の神力は失われ、一族の内陰陽師となり活躍するものは今や一握り

妖達は人々の生活に侵食してきて悪事を働く

見かねた土御門家の陰陽師達は他の一族の陰陽師達と同盟を組み、妖に対抗する組織を作った

その名は[稲荷]

社を稲荷崎大社とす





「ここまでで分からない事がある人?」


にっこりと微笑む講師の先生
この話は何回目だろう
土御門家の末裔として生まれてから数年経ったある日、いきなり神力が芽生え、喜んだ両親に稲荷に入れられて約一年経つ


「では今日は式神について勉強しますよ」


私はまだ5歳なのにひたすら陰陽師の勉強をさせられたおかげで幼稚園に通う子供たちよりは知識も豊富だと思う
私の他にも陰陽師のたまごたちはいて、このクラスは3人の生徒で構成されている


「式神?!はいはい!俺出せるで!」


うりゃ!と力んだのは土御門響
土御門家の分家の末裔
つまり私と親族

響の背後には狼のような獣が現れる
その喉元には式神の証である勾玉がぶら下がっている


「こら響くん、出しちゃダメでしょ」

「えー、雷牙おりこうさんやでー」

「んもー、響アンタまた悪さして」


響を止めるように立ち上がったのは蘆屋道満の末裔とされている土師美嘉
昔は仲悪かったらしいけど、同じ陰陽師として協力関係にある


「美嘉ちゃんの言う通りよ、みんな席について」


先生が諌めてようやく席についた二人
雷牙は出したまま


「式神というのは陰陽師が使役する鬼神のことで、人心から起こる悪行や善行を見定める役を務めるものです
式の神と呼ばれることもあります

式神の中でも安倍晴明が使役した十二神将が有名ですね
動物を模した式神が多いのは、本来動物は神の使いとされているからです
雷牙ちゃんは狼だね」


ワンっと吠えた雷牙に「犬じゃないの?」と言う美嘉、確かに雷牙は狼というより犬っぽい


「陰陽師は式神を使役して妖と戦うことが多いです、なので美嘉ちゃんと七歌ちゃんも式神と契約しないといけませんね」

「美嘉は一族代々の式神がいるからともかく、七歌は式神契約失敗し続けてるもんな」


響という通り私はこの一年様々な式神と契約を結ぼうとしてきた
本来は5歳児なんかと契約は結ばないものなんだけれど、神力が高ければ問題ないらしい
響は土御門家の分家のため神力がかなり高いので雷牙は応えてくれたとのこと
私は響よりも神力が高いらしいのに式神はいない

その理由は明解


「もしかして七歌ちゃんの式になりたい子が邪魔しているのかもね」


式神の中でもそんな悪戯っ子がいるらしい
いつ出会ったのか知らないけれどえらく気に入られたものだ


「今日はここまでにしましょうか」


先生が出ていくのを見送ってから、私たちも席を立つ
稲荷の陰陽師見習いたちは稲荷崎大社の地下にある稲荷本部の一角のこの学舎で陰陽師としての知識を得る

稲荷を出て自宅へ帰る
私は陰陽師として敷かれたレールを生きていく


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