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安倍晴明が現れて早一ヶ月
いよいよ異変が怒り始めた

全国各地で領主と呼ばれる妖が襲われるという妖狩りが行われているらしい


「昨日は二体、その前は五体殺られとる」


この異常事態に陰陽師の中でも権力のある十二人、通称十二神将が集められた
その十二神将と私、響、美嘉は稲荷の大広間で向き合っている
その中、侑が淡々と告げた一言
妖狩りで消滅した妖の数だ


「領主は何体いるんだ?」

「全体で百はおると思う、でもたった二日で七体も殺られたんや、相手も本気出してきとる」

「百鬼夜行を起こすなら妖狩りを行う必要はないんじゃないのか?」

「俺ら領主の妖は百鬼夜行を阻止するよう三大王から仰せつかっとる、つまり安倍晴明からしたら敵や」


邪魔者を排除するつもりだろう
それは妖も人間も皆同じ
安倍晴明からしたら私が生きていれば他はどうでもいいのだと実感してしまった


「お主らは安倍晴明と遭遇したようだが」


十二神将の一人が私達を横目で見ながら冷たく言い放つ


「はい、遭遇しました、しかし相手の術を前になす術もなく「フン!土御門と言えどまだ子供、強大な力を前に無力と思い知れ!」


私みたいな本家の人間が気に入らない陰陽師も少なからずいる、その代表がこの人物
確か十二神将の参人目を司る人

別に厭味には慣れているんだけれど時と場合を考えてほしい


「喧しい、今はそんなこと言っとる場合やないやろ」

「響殿、言葉遣いには気をつけた方がいい」

「ご忠告どうも」


響が会話を切ってくれたおかげで話が元に戻る
侑と治はかなり不機嫌そうだけれど大人しくしてくれているから助かった

コホンと咳払いしたのは祖父
場が一瞬で静まり返った


「これからの事だが、全国の陰陽師に緊急陰陽令を発動する
奴の狙いは領主の妖、各地の陰陽師に領主と手を組み安倍晴明に対抗するよう伝えよ」

「「「「はっ!」」」」

「七歌」

「はい」


祖父の目を見れば、陰陽師の長としてだけでなく祖父としても心配してくれているのが伝わってきた
ごめんね、おじいちゃん、でも逃げる訳にはいかない


「お主に渡すものがある」


そう告げ取り出したのは一枚の封印札


「これは…?」

「その妖狐の力を増幅させることが出来るものじゃ」

「っ、待てや爺さん!」

「それは必要ない!」


侑と治が人型になって祖父を制しようとしている
その様子は何かに怯えてるようにも見えた


「やめなさい」

「「っ!」」


一言、私がたった一言を放っただけで二匹は押し黙ってしまった
それが主従関係だから仕方ないけれど、こんな強行手段は使いたくないのが本音


「これを使うには術者の神力が必要じゃ」

「普通の式札とは違うんですか?」

「…使用するのは神力だけでなく、生命力も必要じゃ」


つまり、これを使うには私の寿命が引き換えだという事
それを聞いて巫女が最期に使用したのがこの札だと理解した

侑と治が覚えていないのは膨大な力を手にして暴走したからだろう
二匹が自分達が殺したというのも解釈によってはそうなるのかもしれない


「これを使うかは私が決めます」


祖父は頷いて私に札を手渡した
それを見ていた響と美嘉も二匹と同じように納得がいっていない表情だったけれど、安倍晴明の強大な力を前にして私が出来ることは全てやるつもりだ

たとえそれで死んでしまったとしても
だって私は土御門の末裔なのだから





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