16/32



矢が撃ち込まれてから半年が経った
ここまで特に大きな事件もなく時は流れる

嵐の前の静けさのようで気味が悪い


「七歌、今日角名と隣のクラスの銀島と帰りにカラオケに行くんやけど、一緒に行くか?」


響に言葉を返そうとした時、空気が変わったのを感じた

教室が静まり返ったように誰も言葉を発さない

いや、発せない

時が止まったように誰も動かない教室
響と美嘉がすぐ様私の元へ来た


「なにこれ」

「妖の仕業か?」

「校舎に仕掛けて来るってことは…また結界が?」

「…それなら本人に聞いてみるのがええかもね」


目を向けた先にはにっこりと微笑む一人の少女
真っ白なワンピースを身につけたその姿はまるで人間
けれどこの空間で動いているということは陰陽師か黒幕
前者は今までに見たことが無い上に神力は感じない為ありえないので、消去法で後者になる

それを裏付けるように溢れ出てる妖力はかなりのもので緊張が走る


『お主らは陰陽師か』


今までの妖と違い流暢に話す少女
言葉が届くたびに空気が重くのしかかってくる


『なるほど、土御門の人間と土師の人間か』


食い入るように見つめてくるその少女に即座に印を結び妖狐を呼び出す
二匹はただならぬ妖気にすぐに警戒態勢になる


『飼い慣らされた狐め』


少女は楽しそうにその場で一回転した
回転し再びこちらを向く時には人間の姿をした少女はおらず、そこには大きな蜘蛛がいた


「女郎蜘蛛か」

「よりによってタチ悪いやつを送り込んで来よったな」


双子が警戒する中、響は雷牙を、美嘉は兎々を召喚した
女郎蜘蛛は私達を眺めて楽しそうに笑う


『人間に仕えるとは同じ妖として恥ずかしくないのか貴様ら』

「人間と俺らは干渉しあったらアカン、でも時折お前みたいに人間にちょっかいかけるやつがおる」

「そんな奴を野放しには出来へん、俺らはその為にここにおるんや」

『笑止、つまらん話を聞かせるな』


女郎蜘蛛の纏う妖気が一段と高まる
時間が止まっているとはいえここで戦うわけに行かない
まずはグラウンドに出ないと


「侑、治、お願い」

「「了解」」


女郎蜘蛛に向かっていった二匹
その内に私達もグラウンドへ移動する

幸いにもグラウンドに生徒はいなかった
通常なら人払いするものの、イレギュラーのため心配してたのだけれと、これなら大丈夫そうだ

安心した時、私達の目の前に二匹が降り立った


「七歌、アイツむっちゃ固い!」


侑と治を追いかけてグラウンドへ降りてきた女郎蜘蛛へ目を向ける
殻で覆われているのか二匹の牙が届かないなんて厄介な妖であることは間違いない


「七歌、ここは俺らに任せて」

「響と美嘉に?」

「そう、私達によ」


前に出た二人を見て女郎蜘蛛は愉快そうに笑い声を上げた


『今度はお主らか?』

「雷牙」

「御意」

「兎々」

「了解」


響と美嘉が印を結び
神力を高める


「我土御門の名において牙狼を以て悪しき不浄を滅す」

「我土師の名において月兎を以て悪しき不浄を滅す」

「「武装解放 式 急急如律令!」」




back



- ナノ -