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稲荷崎高校に合格し、無事に高校生へとなる事が出来た私

美嘉と響とも同じ学校のため楽しい高校生活を送れている


「土御門、何読んでんの?」

「あれ、角名くん部活は?」

「質問してんのはコッチなんだけど」


図書室で陰陽師に纏わる本を読んでいると隣に腰掛けてきたのは同じクラスの角名くん

目付きは悪いけど優しいクラスメイトだ


「また陰陽師?熱心だねー」

「ふふ、先祖のこととか気になるもんやろ?」


陰陽師とは陰の存在
土御門家が安倍晴明の末裔の一族だということは有名な話だけれど、現世に陰陽師がいると知っている一般人はいない

不用意に存在を明かすと妖に魅入られる可能性があるからだ


「お、これ知ってる」


角名くんが指差したのは百鬼夜行のページ
昔の人が描いた百鬼夜行のおぞましい風景が載っている

思わず目を細めた私を見てか否か、角名くんは少しため息をついた


「最近難しい顔してること多いけど悩み事?」

「うーん、まあそんなとこ」

「それって俺には相談出来ないわけ?」

「…角名くんは賢いから気がついてるんやろうけど、時に好奇心は足元掬われるから注意せなあかんよ」


にっこりと微笑むものの言葉でしっかりと拒絶すれば、角名くんは面白くなさそうに眉をしかめた


「俺には土御門が何背負ってるのかなんてわからないけど、力になれることなら協力する」

「優しいんやね」

「友達なら当たり前」


チラリと図書室の端を見れば同じように本を眺めてる治がいる
高校に上がってから二匹はたまに学校に着いてくるようになった
理由は分からないし、話そうともしない

でもその日が近づいてるんやろうとだけは理解した

治は本から顔を上げて私に目を向けた
目が合った途端、嬉しそうに微笑む治


「ほんまみんな優しいんやから」


ポツリと呟いた一言に首を傾げる角名くん
何でもないと笑って誤魔化してから本を棚に戻しに席を立つ

するとヒヤリとした感覚が背中に伝った


「七歌」


治の声が聞こえて即座に角名くんの腕を掴む
角名くんは突然の事にキョトンとしているものの私の様子を見てただ事じゃないと悟ったようだ

周囲を見渡せば結界が張られているはずの校舎なのに本棚の向こうからじいっとこちらを見つめる影が一匹

妖だ


「角名くん、早速お願いあるんやけど今から見る事は黙っててくれる?」

「え、何を」

「侑、おいで」


治は傍にいるため良いとして、家でゲームをしてるであろう侑を呼び出せばフワリと風が靡いて金色の毛並みを持つ狐が図書室の机に降り立った
その横に着地したのは狐になった治


「狐…?」




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