8/32



七歌の式になって早七年
随分現代にも慣れてきた


「なーツム、今日の集会どないする?」

「あー、年一やし今年くらい行かんでええんちゃう?」


二人揃って日向ぼっこをしてるとサムが思い出したように声をかけてきた
俺ら領主の妖は年に一回三大王の下へ集まる集会がある
何百年も生きとる俺らからしたら多少サボってもええかなって感覚なんやけど、領主たるものそこはちゃんとせなあかんらしい


「七歌に手紙残して行く?」

「そうしよか」


集会に行ってきます 侑 治
と書いたメモを七歌の机に置いて土御門家の敷地から出る
集会の場所は稲荷崎の土地にある稲荷山
妖気が集まるため三大王はここに住み着いている


「おー、久しぶり双子」

「んお、猫又の鉄朗くんやん」

「何百年かぶりやなあ」


雷牙と同じくらい大きな身体に裂けた尾を持つ猫又の鉄朗くんは東京の方の領主や
俺らよりちょびっとだけ歳上
ちなみに猫又という名前なんやけど、他の猫又と区別するために酒呑童子が鉄朗と付けたらしい


「また式神になったんだって?飽きないねーホント」

「人間おもろいやん」

「鉄朗くんも式になってみたらええんちゃう」

「やだね、人間と関わるとろくな事ないでしょ」


スタスタと歩き始めた鉄朗くんの後ろをサムと二人で着いてくと、古びた社がある開けた場所に出た
そこには無数の妖たち
そして椅子に座っている三大王


「久しいのう、金狐銀狐」

「久しぶりやな玉藻前」

「化粧濃いわ」

「相変わらず生意気な小童共よ」


頭なんやからほんまは敬語を使わなあかんらしいんやけど、俺もサムもそんな気はサラサラない
俺らは金狐と銀狐、そこらの妖狐とちゃうんや


「して、お主らまた人の子の式になったと聞いておるが…暇潰しにしては随分と笑えぬことよのう」


どうやら怒られとるらしい
玉藻前をじいっと見据えれば、玉藻前も俺らを冷たい目で見下ろしてる


「そこまでや」


凛とした声が届いて俺とサムがピーンと耳を立てた
振り向いた先には真っ白な毛並みの天狐の北さんがおった
ちなみに北さんは俺らの前まで稲荷崎の地の領主やった妖で、今は玉藻前の側近として働いとる


「北さん!」

「玉藻前様、この二匹を叱咤する前にまずは集会をせなあかんでしょ」

「フン、貴様も偉そうに」

「「北さんになんてこと言うねん!」」

「お前らも玉藻前様になんて口きいとんや」


北さんにはずうっと昔からお世話になってきた分、玉藻前とは違って敬語やし尊敬もしとる
俺らにとって敬意の対象は北さんや


「まあ良い、それよりもだ近頃妖の中によからぬ事を企んでおるものがいるらしくてな」


玉藻前が面倒くさそうに告げると、大嶽丸が頷いた


「かの昔、百鬼夜行を取計らい安倍晴明と巫女に封印されたはずの妖の同胞達の動きが活性化しているらしい」

「そこでだ、領主の諸君に土地の護りを強化してもらいたい、特にこの稲荷崎の地を護る金狐銀狐お前達には期待している」


酒呑童子も好き勝手言いよる
俺とサムがこの地を護るんは決まりやから別にええけど、圧力かけられるんは気に入らん


「話終わった?もう帰るわ」

「つまらん事で呼び出すんやない」


はよ帰って七歌に構ってもらおう
大丈夫や、俺らはこう見えても七歌にはかなり懐いとる
絶対に護ってみせるんや

今度こそ、俺らで





back



- ナノ -