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ネット越しに握手する選手達

勝者は烏野高校


撤収のためにベンチから立ち上がりサイドに捌ける


「じゃあまたな飛雄くん」

「あ、ハイ」

「翔陽くん」

「ハイ…?」

「俺はいつかアンタにトスを上げるで」


その言葉に思わず足を止めて振り返った
侑は日向くんにトスを上げると宣言した
それは同じ舞台に上がってくると確信してるってことや

そっか、日向くんはいつか侑と肩を並べるんか


「(ええなあ)」


私も同じコートに立ちたい
無理なんわかってても諦めれる気配がないのは未練たらたらな証拠

それに比べて悔しないはずなんてないのに侑はもう未来を見てる
これが強さの秘訣なんやろか


「でもその前にIHで潰したるから覚悟しときや」

「負け犬の遠吠えか」

「ッハー!?じゃかあしいんじゃ!!」

「やんのかクソツム!!」


喧嘩しとる二人を号令で呼んだ北先輩
稲荷崎応援団の前に整列した一同に拍手が送られる


「罵れや、敗者に拍手なんか要らんねん」

「喧しいわっ侑クラァ!!!!」

「!?(いやさすがに聞こえてへんよな)」

「顔に出とんねんお前はァ!!!!
いい試合にはいつだって賞賛じゃボケェ!!!」


応援団に怒られてる侑に監督が笑い声を上げる


「アイツはホンマアホやなあ!」

「監督、応援団の人こっち見てますけど」

「ゲッ」


そそくさと身を隠す監督
この後北先輩と監督はインタビューがあるから残りのメンバーは荷物をまとめて会場外で待機


「みんなお疲れさまです」


できるだけいつも通り声をかける
変に気遣っても仕方ない


「おん、応援してくれてありがとうな」

「声ちゃんと届いとったで」

「にやにやしてたんも見た」

「わ、忘れてください!!」


アランくん、赤木先輩、大耳先輩にからかわれる
そらあんな試合目の前にして平常心なんて無理やろ


「ああいう顔見ると那月もやっぱ双子の幼馴染なんやなあって思う」

「「ほんまそれ」」

「悪口ですか?」

「「おい待て」」


聞き捨てならんぞと両サイドに立ちはだかる侑と治
いやいや、ほんまアンタらと一緒とかちょっと悲しいからな


「涼香が監督と息ぴったりに叫んだのは笑った」

「倫太郎までホンマやめて」

「いっちゃん笑ったんは双子にブチギレた時やろ」

「あーあれね、テレビ映ってんじゃない?」

「う、うそ…え、あれが…??」


言われてみれば春高なんて大きいスポーツイベントにテレビカメラが来んわけなくて
なんなら試合は中継されてる

え、じゃあ絶対映ってるやん


「携帯見てみいや、LINE来てるかもやで!」

「侑アンタほんっっま嫌な性格しとるな」

「褒めとるん?」

「耳鼻科行き」


そうこう雑談してる内にインタビューを終えた北先輩がこっちに向かってくるんが見えたので全員が一旦口を噤む

これで3年生は引退
それが現実なんやと思い知らされた




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