115


「で、どない思う?」


にっこにっこと楽しそうに微笑む侑へ目を向ける
主語がないにも関わらずなんの話かすぐに分かってしまった


「あの三人?」

「そうそれ」


部活帰りに侑と寄ったカラオケ
その一室でジュースを飲みながら話す話題は二組の三角関係


今の稲荷崎ではかなり有名な話題で、ちょっと前まで私と双子がそうやったらしいんやけど、今やあかりと倫太郎と治が渦中の人物や


「みんな一方通行やなあって」

「サムはまだ涼香のこと好きなんやろなあ」

「それ私の前で言わんといてや、気遣うやん」

「何言うとんねん、お前は俺の彼女やろ」


堂々としてろとか他人事のように言う侑の自信満々な様子に呆れながらも話を戻す

倫太郎は確実にあかりのこと好きやと思う、ほんであかりも治のことが好きや
ほんで言いづらいけど治はまだ私の事が好きらしい

完全に全員一方通行や


「俺はサムとくっつく思とるんやけどな」

「私は倫太郎だと思う」

「そもそも二宮もスナも無自覚やからタチが悪い」


治が私のことを好きって言ってくれたんは嬉しかったし、素直にありがとうって思ったけど、私は侑が好きやからお断りした
まだ未練がある言われてもそこはもう揺るがん

ただあかりに治を押し付けるような形になるのが嫌やから三角関係にはあまり介入せんようにしてる


「侑すぐ引っ掻き回すからな、今回こそ邪魔したらアカンよ」

「せえへんよ、バレーに支障出んかったらの話やけど」

「倫太郎は大丈夫やと思うけど治は意外とコンディションにメンタルが反映するから心配やわ」


はあ…とため息をついた時、向かい側の席にいたはずの侑が隣に座ってきた
急に詰められた距離に驚きつつも、侑に目をやれば、相変わらず楽しそうににこにこと微笑んでいる


「なに」

「いや、せっかくのデートやしそろそろ涼香を充電したいなーって」

「話振ってきたんは侑やん」

「細かいことはええねん」


ちゅっと触れた唇に押し黙った私を見て満足げに微笑む侑
今回の主導権はどうやら侑にあるらしい




−−−−
−−−



翌日、部活に顔を出した私の目に飛び込んできたのは治と言い争ってるあかりの姿


「なんやねん!言いたいことあるならはっきり言いや!」

「なんもない言うとるやろ!」

「ならその態度なんやねん!」


そう言えばこの二人が仲悪いん忘れてたわ
倫太郎もこの光景に呆れてるのか、我関せずといった状態
もう少ししたら北先輩がやってきて、春高も近いのになにしてんのやって怒られるのが目に見えてる

止めるかと思い一歩進めた時、治が半ばやけくそになって叫んだ


「お前黙ってたら可愛ええんやからしおらしくせえや!」


治が叫んだことにも驚いたけど、問題は内容や
これには倫太郎も衝撃を受けたのか固まってるし、侑と結は楽しそうや

当の本人達は自分が何を言ったのか、何を言われたのかを考えてるのか暫しフリーズしてる様子
あ、二人とも真っ赤になった


「っ、嫌味かアホ!」

「や、喧しい!さっさと練習行けや!」


そんな甘酸っぱい光景に朝からテンションが上がったのは秘密や

prev next




- ナノ -