相手の方が体格が良くて数も多い、そしてこちらが丸腰なのに対して相手は鉄パイプなんて物を持っていたなら――勝ち目がないのは当然だ。いくら喧嘩慣れをしているカルマだって、後ろから後頭部を殴られればひとたまりもない。だからここでは抵抗しないのが吉だと、○子は溜息を吐いた。
ガムテープで粗末な拘束をされながら状況を伺えば、奥田は何とか隠れてやり過ごせているらしい。カルマは頭を、渚は頬を、杉野は腹を殴られたようだが、…何とか無事だと願う他ないだろう。幸いというか何というか、呻いているだけまだ安心だ。茅野と神崎は一緒に捕まってしまったが、彼女達には自分がついているから、まぁ大丈夫だろう。
この状況で「攫われた」のは女子のみ。このガラの悪すぎる男達が何を目的にしているのかが容易く想像できて、○子は「いつの時代でもこんなのがいるんだから困ったもんだね」と誰に言うでもなく吐露したのだった。

「大丈夫だよ二人共」
「…綾部さん」

車に揺られながら、リーダー格の男が口にした言葉に瞳を揺らす神崎が俯いていた顔を上げる。強気に言い返していた茅野も、今は眉を寄せて不安げだ。不良共は「これから行うこと」について盛り上がっているようで、こちらの話には気付いていないようだ。

「奥田さんは無事みたいだし、潮田達もじきに動けるようになると思う。そうすればあの万能な先生に連絡してくれるでしょう」
「確かに殺せんせーが来てくれれば安心だけど…○子、何でそんなに冷静なの…」

若干呆れたような茅野にそう問われ、○子ははて、と首を傾げる。

「そんなに不安がる必要もないじゃない」
「いやまぁ…そうだけど…」
「さっきも言ったでしょう、大丈夫だって」

乱暴に揺れていた車が止まった。どうやら男達の目的地に到着したようだ。さらに顔を強ばらせる二人に、○子が目を細める。

「ここに私がいるんだから」

「だから、これから私が言う事を絶対に守ってくれない?」と、心なしか笑っているように見える目の前のクラスメイトに、茅野と神崎はただ頷くしかなかった。


150330 台無しの時間




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