熱いくらいの温度を持つ大きな手が、労るように下腹部を撫でる。
深亜は幾度目かのため息をこぼし、気怠い身体を後ろへ傾けた。
背中に体温を感じると同時、自分の身に回された腕の力がかすかに増した気がする。
普段の深亜ならばその腕をすぐさま除(の)けているが、そうしようと手を動かすのも、どけてと相手に言うことすら面倒だった。
それに味を占め、労る手つきとは裏腹に、遊ぶように湿った唇が深亜の首筋を嬲っていく。
押し当てられた唇がちゅ、と音を立て、ひと舐めした舌先がくすぐってくる。
甘く歯を立てられたところまでは許容できたが、ちりっ、と走った小さな痛みに、深亜は腹部で重ねられた手の甲を抓りあげた。
「痛たた。痛かよ、深亜」
「なにしてるの」
「んー、深亜ん首のきれかったけん」
「そんなこと訊いてない」
「平気たい。髪で隠れっけん――たぶん」
こめかみにくちづけ、懲りた様子もなくまた唇が首筋をすべりだす。
諦め半分に「……見えるとこにつけないで」と呟けば、うなじを食む唇が笑みの形に歪んだのがわかった。
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