とどめと言わんばかりに、飛びかかろうとした狼の前へ深亜は立ちはだかった。
どんっ、と強い衝撃が全身に響く。
けれど深亜はしっかりと腕を狼の首に回し、草の上へ膝をついた。
苦しげな息を吐きながら、「やめて……」と深亜は泣きそうな声で懇願する。
「お願い、だから、あの人たちを、殺さないでください……」
「深亜、どきなっせ」
「お願い……っ。もう二度と、貴方から離れようとしない、から……」
誰かが息を呑むような音が聞こえた。
「一生、貴方と共にあることを誓います……だから」
「ほんなこつね?」
人型へと戻った男に上向かせられ、顔を覗き込まれる。
男の目を見つめながら、深亜はこくりと、頷いた。
途端男は相好を崩し、深亜をきつく抱き締める。
「だ、めだ……っ、あんたが、犠牲になることはない……!」
「……ごめんなさい」
男の腕に囚われたまま、深亜は青年を振り返る。
「父と母に……わたしのことは忘れてくださいと、そう伝えてください」
深亜は微笑を浮かべた。
壊れた少女は、もう帰ってはこない。
『そのさん』と『そのよん』の間になにがあったのか、私が一番知りたい。
人狼の郷はここより離れた場所にあって、四天メンバーや男女カプ組が暮らしてる……とか無駄に考えてた。楽しかった。
ちなみに橘さんは人間の友人。
白いワンピースの裾がふわりと揺れる。
頭の天辺から足もとまでじっくりと眺め、男は満足そうに笑った。
仕上げは、男が手にしている冠だ。
「お花のかんむり?」
「ミユキからばい」
色鮮やかな花々で編まれた冠を、彼女の頭へそうっとのせる。
伏せていた目蓋をあげる彼女を真正面から見つめ、幸せに目を細める。
「俺ん花嫁さんは、世界一きれかたい」
考えてた結末のひとつ。
幸せだけど歪んでるって雰囲気が好き。
誤字脱字、不具合等お気軽にお報せください