角を曲がった先で目当ての人物が歩いているのを見つけ、ミツグはその背中に呼び掛けた。
振り返った後輩は、少し意外そうな顔をしつつ立ち止まった。
「なんすか、安藤先輩」
「ちょうどよかった、財前くんに渡すものがあるんだ」
「俺に渡すもの……?」
ああ、と頷き、ミツグは手にしていた真っ白い封筒を財前へと差し出す。
「はい、財前くん。誕生日おめでとう」
「は?」
突然のことに、財前は差し出された封筒を凝視するばかりだ。
「……なんすか? これ」
「商店街にある甘味処の無料招待券だよ」
きらりと財前の目が光ったと同時、素早い動きで封筒に手が掛かる。
「どもっす」
「お二人様までいいらしいから、誰か誘ってくといいよ」
「…………」
じとりと睨んでくるような目つきに、ミツグは「ん?」と首を傾げる。
その様子に、先の発言に他意はないのかと自分を納得させ、財前は小さく息をついた。
「どうした? 財前くん」
「いや、なんも……そんならこれ、有り難く使わせてもらいますわ」
「ああ、そうしてくれ」
ぺこりと軽く頭を下げ、歩いていく背中を見送っていれば、背後に気配を感じミツグは振り返った。
「千歳くん」
「財前くんにあん無料券、あげたと?」
「たった今ね。でもよかったのか? 千歳くんがくじ引きで当てたのに、俺からのプレゼントって形で渡しても」
「俺から渡して、下手に勘繰られても困るけん」
他意はないと言い張っても、自分たちをおもちゃに面白がってるとあの後輩なら思いかねない。
「それに、財前くんは俺よりミツグに懐いとるけん、ミツグからん方が素直に受け取るばい」
「まあ、千歳くんがそれでいいならいいんだけど」
そう言ってぽん、とミツグは千歳の肩をたたいた。
「さて、俺たちも部活しに行こうか」
「終わったら冷たかもんでも食いたかねぇ」
「なら、さっきの貸しを返すってことで、アイスでも奢るよ」
「ほんなこつに? ならガリガリ君食う」
「はは、安っ」
光お誕生日おめでとう!
しかしガリガリ君の梨味はなんであんなにうまいのか。
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