白んでいく空をぼんやりと見ながら、千歳は縁側に腰掛けていた。幾度目かのあくびに口許を押さえ、目尻を指で拭う。
 ざっ、とようやく聞こえてきたかすかな足音に、千歳は下駄を引っかけ庭へと下りた。
 薄暗い中を慎重に歩いていた人影が徐々に近づいてくる。互いに視認できる距離まで来れば、その人は千歳を凝視したままぴたりと足を止めた。
 代わりに、千歳が歩み寄っていく。

「またあの子んとこね?」
「…………」
「深亜の気にすっこつじゃなかよ」
「……だって、あの子があそこに閉じ込められてるのは、わたしの所為、じゃない」
「そっが猫憑きんなったさだめばい」
「…………」

 俯く少女に軽く息をつき、千歳は彼女の手もとへと視線を落とす。
 そこにつけられた、赤い線を作る爪痕。
 千歳は傷に触らぬよう、少女の手を取る。

「毎回引っかかれるんに、そっでも会いん行くと?」
「…………」

 こくりと、少女は頷く。

「……腹の立つ」
「え――っい、た……せん、り」

 きつく握り締めた手につけられた傷へと、千歳は無遠慮に舌を這わせる。

「深亜に傷ばつけるんは、俺だけでよか」



悪足掻きという名の設定あれこれ↓



『千歳』と『橘』は九州にある分家。
十二支として生まれた二人はそのまま熊本で暮らしていたが、本家に呼ばれ以後は本家で暮らすように。
十二支じゃないけど、謙也・侑士も一族の人間。誰得俺得。


神…当主(15)

子…朋香(13)
丑…精市(18)
寅…寿葉(16)
卯…手塚(21)
辰…リョーマ(13)
巳…観月(17)
午…千歳(23)
未…桜乃(13)
申…赤也(14)
酉…光(14)
戌…橘(23)
亥…弦一郎(18)

猫…若(12)


これで連載やる気とかまったくないんだけどね。

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