ぽつり、と窓ガラスを打った滴は見る見るうちに窓全体に広がり、バケツをひっくり返したような土砂降りとなった。
 部室内にいた深亜が急いでタオルを用意している間に、外からずぶ濡れの部員たちが雪崩込んできた。

「なんやねん! あり得んやろこの雨!」
「ごっつ濡れたー!」
「ちょっ、金ちゃん頭振らんでっ」
「いやんっ、ブラの線が透けちゃうわぁ」
「こ、小春ぅ! はよタオルで拭かなっ。お前ら小春のこと見るんちゃうぞ!」
「……先輩ら、今のはマジで引きましたわ」
「自分ら、遊んどらんとちゃんと拭いときや」

 雨に打たれた程度では萎れない――むしろ余計に騒がしくなった――部員たちに控えめに笑いながら、深亜はタオルを渡していく。

「遠山くん、ちゃんと拭かないと、風邪ひいてしまいますよ」
「すごいでっ、運動場に川できとる!」
「こーら金ちゃん」
「ぶわっ? なにすんねや千歳っ」
「拭いたるけん、じっとしてなっせ」

 兄弟――見ようによっては父子のような二人に、つい深亜は唇をほころばせる。

「ばってん、ほんなこつひどか雨ばい」
「風もどんどん強くなってきてる――今日はもう終わりにしますか?」

 振り返り、深亜は部長の白石に問い掛ける。
 髪を拭いていたタオルをかぶったまま、白石は見通すように窓の外へ視線をやり、

「たぶんそうなるやろうけど……一応、オサムちゃん来るまでは部室待機やな」
「帰るに帰れんけどな、この雨やったら」

 長机に軽く腰掛ける形で立っている謙也が、白石の言葉を受けそう応えた。
 その間にも、雨脚はますます強まり、吹きつける風が窓枠を揺らす。
 ばんっ! と窓ガラスにぶつかった突風に「きゃっ」と深亜は悲鳴を上げた。
 千歳が咄嗟に遠山と深亜の頭を庇う。

「びっくりしたぁ!」
「あ、ありがとう千里くん」
「んにゃ。割れんでよかったばい」
「そこの三人、危ないから窓から離れとき」
「台風並みやな……補強しとらんけどいけるか?」
「蔵り〜ん、廊下雨漏りしてるわよー」
「……早速かい」

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