後ろにいる先輩たちのことなど、今の彼の頭からはすぽーんっと飛び去っていて、無邪気な笑顔で「おっちゃん、たこ焼きひとつ!」と小銭を握り締めた拳を突き出している。
忘れ去られた先輩たちはお互いに顔を見合わせ苦笑し、自由奔放な背中目掛け走っていく。
「遠山、勝手な行動すんなや」
「おっちゃん、俺らもたこ焼きひとつずつ」
新人の説教は同校出身の先輩に任せ、部長はちゃっかり人数分のたこ焼きを注文する。
安藤さんも食べる? と訊かれ、深亜は困り顔で首を振った。
「すみません」
「ええって」
「なら回転焼きは?」
覗き込むように訊ねる千歳に、「回転焼き?」と深亜は訊ね返す。
「回転焼き、知らん?」
「ええっと……」
「あー、東京の方では呼び方ちゃうんやなかったか?」
なんや侑士が言うとった、と東京に情報源がある謙也が深亜のフォローに入る。
「今川とかなんとか」
「あ、今川焼きですか?」
「へぇ、今川焼きいうと」
「おーい、結局どないするんー?」
大阪、熊本では回転焼き呼びがメジャー?
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