(美術教師×女子高生)



 ふわりと、窓から入り込む風に遊ばれる黒髪に、つい千歳は視線を奪われる。
 背中を覆う髪は艶やかな光をたたえ、それだけで絵になりそうな美しさだ。
 しかし当の本人はそんなこと知りませんと、むしろ鬱陶しいと言わんばかりに、長い髪を手で払いのける。
 そんな彼女に、周りにばれぬよう、千歳はひっそりと笑みを浮かべる。


 + + +


 美術室から窺えるグラウンドでは、女子生徒たちが体育の授業に勤しんでいる。
 その中でも一段と目を惹くのは彼女の黒髪で、千歳は窓枠にもたれ、尻尾を思わせる結われた髪を目で追いかけていた。

「随分と有意義な時間を過ごされていますね、千歳先生?」
「――気配消して近づかんではいよ、幸村先生」
「鼻の下伸ばして彼女に夢中になってるから気づかなかったんだろ」

 ははは、と爽やかに笑う相手に、千歳はため息をつきたくなる。

「そんな調子じゃ、お前の教師にあるまじき性癖がすぐに露呈するぞ」
「性癖言うな。……幸村かて、二つ結びの女子生徒見るたんび、やに下がっとっと」
「……へえ」

 一瞬だけ、表情の消えた顔には、またたきの間にもとの微笑が貼りつき、

「俺は“まだ”手は出してないから、なんとでも言い繕えるさ」
「…………」

 千歳はまるでなにごともなかったかのように、窓の外へ視線を逃がした。

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