真白い壁と天井。深紅の絨毯が敷かれた床。
大きく柔らかなベッドと、閉ざされた重厚な扉。
そして窓から覗く、切り取られた風景が、深亜の見る世界のすべてだった。
外と内とを隔てるガラスに手をついても、ひんやりとした冷たさは外の温度を感じさせない。
ふぅ、とため息がもれる。
なんとなく、その場から動く気になれず、毛足の長い絨毯に座り込んだ。
しゃらりと、足に繋がれた鎖が鳴いた。
膝を抱え目を閉じ、耳を澄ませてみても外の音は聞こえない。
何度試しても同じこと――それでも繰り返してしまう自分に呆れて息を吐いた直後、唐突に響いたノック音に深亜はびくりと身体を揺らした。
それ以上深亜が反応する間もなく、扉が開かれる。
始めから――この屋敷のこの部屋に連れてこられた時から、深亜の意思など、必要とされていないのだ。
「なんし、そげんとこ座っとっと?」
深亜の前に立ち、穏やかな顔で、屋敷のあるじ――千歳は笑う。「汚れったい」と深亜の腕を掴み立たせると、そのまま腕を引いてベッドの上へ放る。
柔らかな中へ埋もれる深亜を見下ろす目は穏やかなはずなのに、深亜はぎゅっと、シーツを握った。
千歳がベッドに膝をつく。
頬を撫でる手に、思わず深亜は肩をはねさせた。
くつくつと、千歳は喉を震わせる。
「いつまで経っても慣れんね」
「ご、ごめんなさい……」
「よかよ――」
強く肩を押さえ込まれ、ベッドに沈められる。
見上げた千歳は、やはり穏やかな笑みを崩さない。
「そん怯えた顔……もっと見して?」
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