はぁ、とため息がもれた。
全身に倦怠感が広がり、腕を上げるのさえ億劫に感じる。
自己管理能力の甘さを自覚していながら、毎回限界を超えないと省みない自分にもはや呆れるしかない。
「深亜」
そっと、気遣うような声が自分を呼ぶ。
やわらかく前髪に触れる手に、深亜は目蓋を開けた。
「せん、り……」
声にまで気怠さが滲んでいる。
その様子に千歳は苦笑し、深亜の額をさらりと撫でる。
「なんか食える?」
「……いらない」
「そう言うと思ったばってん……食わんとよくならんたい」
一度キッチンの方へ引っ込んだ千歳は、手にお盆を持って戻ってきた。
「林檎切ったけん。これなら食えん?」
「…………」
少しだけ考え、深亜はベッドシーツに手をついた。
起き上がった背中を千歳の腕が支える。
お盆ごと受け取ろうとしたが、それより先に林檎をフォークに刺し、千歳が「あーん」と差し出してきた。
ご丁寧にも、うさぎ型に切られた林檎を。
(無駄に器用なことを……)
思いながら、深亜は無言で林檎にかじりつく。
塩水にくぐらせた林檎はほのかにしょっぱかった。
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