肌を濡らして髪を流す様がなんとも艶めかしい。
俯せになった白い背に黒髪がはりついている。その白と黒の対比と、曲線を描くラインはどんな技巧をもってしても表しきれないだろう。
背中にかかる髪を除けようと、千歳は手を伸ばす。しかし指先は別の意図を持って背中をなぞる。
ぴくりと、深亜は背を揺らした。
「せん、り……」
いまだ呼吸が整わず、千歳の行為を責める声音は弱々しい。
千歳はくつりと喉を震わせ、背骨に沿って深亜の背をたどっていく。
「っ……も、やめ……」
堪えるようにシーツを握り締め、熱の冷めていない瞳が千歳を睨む。
いっそ扇情的なまでの姿態に、千歳はさらに笑みを深めた。
シーツを握る深亜の手を上から押さえつけ、あらわにしたうなじに噛みつく。跡を残さないほど弱い力だったが、深亜はびくりと肩をはねさせた。
肩口にも歯を立て、肩胛骨の形をことさらゆっくりと舐め取る。
「せ、んり……っ」
「ん……なん?」
「やめてって……」
「ああ」
妙に物分かりのいい風に深亜から離れた千歳は、深亜が息をつく間もなく肩を掴むと、容易く細い身体を反した。
深亜は目を瞠り、千歳を見上げる。
「な、に」
「背中ばっかじゃ足らんね」
「っ――は、なしてっ」
肩を押しやる深亜の手を捕らえ、ひとまとめにしてシーツに縫い留めてしまう。
わずかに怯えの覗いた目に、凶暴な感情が顔を出しそうになる。
ゆるりと頬を撫でれば、深亜は逃げるように顔を逸らす。
さらされた首の白さが隠された感情を煽る。
「深亜」
「っ、や……」
「はっ……加減……でけん、かも」
張りつけられた獲物に、捕食者の牙がかかる。
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