(同棲設定)



 甘く溶ける声に、やわらかな微笑。しなだれてくる身体はじんわりと熱を帯び、白い頬は紅く色づいている。
 誘うように潤む双眸に、ごくりと喉を鳴らした。
 自身の体温の方が冷たく感じるほど熱い頬に手をすべらせれば、心地よさげに深亜は目を閉じる。
 薄く開かれた唇に惹かれるまま、千歳は深亜へとくちづけた。
 ――かすかに、アルコールの匂いが鼻に抜ける。
 絡めた舌に残るカクテルの甘さが、こめかみの辺りを痺れさせる。

「んっ、ん……」

 どちらのかわからない唾液を飲み込み、深亜は千歳の口許へ指先を添える。
 たどたどしくも応えようとくちづけに夢中になる深亜の姿に、ぞわりと背筋が震えた。
 荒い手つきで深亜の頭を押さえ、反射的に引こうとした小さな舌を強めに吸う。
 びくびくっ、と深亜の肩が大きくはねる。

「っ、あ……」

 離れることを惜しむようなその声に、千歳は深亜の首もとに痕を散らしながらほくそ笑んだ。
 ――ほんの出来心で、ジュースだと偽ったそれを彼女へ差し出した。
 深亜が酒類に弱いことは千歳も知っている。摂取量が限界を越えた深亜がどのようになるかも、千歳は身をもって知っている。
 だからこそ、出来心が働いたのだ。

 ――コップ一杯の丁度よかね……。

 冷静な頭の一部でそう分析しつつ、手は性急に深亜の身体をまさぐっていく。
 ひっきりなしに上がる嬌声は、深亜が快楽に溺れきっていることを千歳に教える。

「深亜……」

 抑え込まれた呼吸のもと、彼女の名を呼び、細い肢体を千歳はベッドへと沈ませた。
 抵抗のない腕をシーツにゆるく縫い留めその顔を窺えば、焦点の定まらない目が千歳を映す。
 とろりと蕩けた目は、明らかになにかを欲していた。

「やぁ……もっ、と……」
「っ……」

 常の深亜からは考えられない言葉に、残っていた理性は容易く砕けた。
 深亜の口内を遠慮なく犯し、手は震える脚から下着を剥ぎ取る。
 待ち焦がれていたそこは蜜をあふれさせ、熱を孕む中は欲深に千歳の指を呑み込もうとする。

「んうっ、あ……せん、り……」
「はっ……やば」

 ――これは、癖になる。

 その声が。
 その貌が。
 その姿が。
 甘やかな毒となって、自身を蝕んでいく。

「あっ、ゃあっ……」

 ――溺れているのは、こちらの方だ。

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