(同棲設定)



 紅く染まる肌に掌を這わせる。冴えるほどに白く、熱を持たない肌が色づく様は、それだけでそそられるものがある。
 抱(いだ)く背に甘く歯を立てれば、ぴくりと肩がはねる。
 ぱしゃり、と湯を弾く音がした。

「……なにしてるの」
「ん? んにゃ、きれか背中と思って」

 真白くなめらかな肌を指先でなぞり、噛み痕の残っていないそこをぺろりと舐める。
 閉じられた浴室に、かすかな吐息が溶けた。

「くすぐったい」
「感じた?」

 ぱし、と、その身に回す腕を軽くたたかれる。
 諫める手に笑いながら抱く力を強め、華奢な肩にくちづける。ちゅ、と濡れた音が湿った空気と混ざる。
 首筋をたどり、うなじに唇を押し当てれば、腕の中で細い身体が震えた。

「せ、んり……っ」
「――感じた?」
「なにも、しないって」
「……まあ」

 ――最初はそのつもりであったが……。
 笑みの形に歪めた唇を、小さな耳に触れさせる。

「なんもせん方が、失礼じゃなか?」
「ば、かっ……」

 囁きを落とした耳をかぷりと食む。
 逃れようともがく身体を容易く抑え、唇で肌をなぶりながら胸もとに手を伸ばした。やわらかな感触を掌で遊ばせれば、俯いた頭が弱々しく横に振られる。
 色づく尖りを指で擦り上げると、ひと際高い悲鳴が響いた。

「ほんなこつに感じやすかね」
「ふっ、う……」
「だけん、噛んだらいかんて」

 声を抑えようと強く噛み締められた唇を割り開き、口内に突き入れた指と舌とを絡める。
 苦しげに反らされる無防備な首に、色濃く痕を散らしていく。

「んうっ……」
「可愛かよ、深亜」

 ふっ、と笑い、熱の上る頬にくちづける。
 なにかを知らしめるように、ことさらゆっくりとすべりおりていく手は身体の中心へと向かう。
 湯とは違う、濡れた感触が指に触れる。

「ふううっ」
「深亜……」

 半ば強引に顔を引き寄せ、後ろから唇を奪う。そのまま指を動かせば、泣きそうな声で身体を震わせる――その姿に、逆上せそうになる。
 深く、中を犯す指が互いの理性を剥いでいく。

「ふっ……く、ぅ……っ」
「っ、は……深亜……」
「あっ、や……いやぁ……!」

 びくんっ、としなやかな四肢が強ばる。
 荒い息を吐き、くたりと力の抜けた身体を抱き締めながら、こめかみに軽くくちづける。
 指を引き抜く刺激にすら反応する様に、堪えきれない笑みが滲む。

「さてと……」

 もたれかかる身を抱き締めたまま、ぱしゃりと湯から上がる。

「……せん、り?」

 茫然と自身を見上げる、その目に困惑の色が浮かぶのが見える。
 揺れる双眸を見つめながら、にこりと微笑んでみせた。

「ベッドで続きばしよかね?」

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