「深亜」
「……え?」

 差し出された一本のポッキーと千歳を交互に見やり、意図をなんとなく理解した深亜は、頬が熱くなるのを感じながら睨むような視線を千歳へ送る。しかし当の千歳はにこにこと楽しそうに笑ってその視線を受け止め、ふたたび「深亜」と名前を呼んでくる。
 ……追いつめられているように、深亜は感じた。

「あ、の……千里くん」
「あーん」
「…………」

 躱す猶予すら与えてくれないらしい。
 唇に触れる、ほんのぎりぎりのところで待ち構えているポッキーにちらりと視線を落とし、観念した深亜はうっすらと口を開け、チョコレートが掛かった部分を控え目に咥えた。
 待ってましたと言わんばかりに、笑みを深めた千歳がプレッツェル側を口に含み、ひとくちひとくち、じわじわと食べ進めてくる。その間深亜は、口を離すことすら出来ず、ただひたすらじっとしているしかなかった。
 あからさまに、千歳は深亜の反応を楽しんでいる。
 見つめてくる眼指しに耐えきれず、伏し目がちに深亜は千歳の目から逃れた。どきどきとうるさい心臓が指先まで震わせる。
 不意に熱い指が絡み、深亜はぎゅっと目をつむった。
 千歳の息遣いが近くなる。
 唇を温かなものがかすめた――と思った時には繋がれた手に引かれ、唇が重なっていた。ちゅっと軽く触れ合わせ、唇をゆっくりと舐められる。

「……甘」

 嬉しそうな声音の呟きが耳に届いた直後、食らいつく勢いでくちづけられ、思わず上げた深亜のかすかな悲鳴も呑み込まれた。頬から首筋を撫でる指に、口内をくすぐる舌に、ぞくぞくと背中が痺れる。
 ふわりと鼻先をかすめたのは、チョコレートの匂い。

(甘、い……)



夢主が千歳とポッキーゲームをすると、相手はちょっとイジワルな顔で、心臓の音が互いに聞こえるほどドキドキしつつ食べ進め、キスをした後に、さらにキスをします。

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