もしも次があったら3 *ネームドモブと現パロ。現パロ…?? 今日は誰も待ってない持久走大会いえー…(萎え)。持久走大会ってホントに誰も喜んでなくない?陸上部もダルがってるからな…こういうイベントを余すことなく楽しめる人はすごいと思う。純粋に憧れる。走るの結構好きだよー!って人は本当によいと思います、その心失わずにいてほしいです。 「あ、男子帰ってきたーそろそろ行かなきゃだね!」 「モカはいつでも元気でいいねー…」 例えばこの親友とかな。男子の部が終わったらしく、だらだらと喋りながら待機場所の体育館に入ってくるのとすれ違う。あーどうせなら先に終わらせたかったな。 「なー見た?交番の前のとこさ、めちゃくちゃ背の高い男の人いたよな」 「見た見た!日本人じゃなかったろ?あのガタイだったらスポーツ選手だって、絶対!」 「でも見たことなくねー?マスクしてたけどむっちゃくちゃイケメンだったぜ、モデルとかだよ」 「なんでこんなとこにモデルがいんだよー!?」 「スポーツ選手だって一緒じゃん!」 …んーーーーー…☆ 「せんせいおなかがいたいです」 「ミョウジ、分かりやすい仮病はやめろー」 「あいたたたた、もうちょうかもしれないなー」 「盲腸だったらそんな口はきけないぞースタート地点行けー」 迅速にフラグが回収される気がしてならない、しかし真面目な日本人根性の染みついている人生三回生のJKは学校行事をサボる背徳感には勝てないのであった。親友のほうのフラグだと信じている。プリキュアを補佐する系の何か、もしくは人間に擬態した敵だと信じているよ。 「はっ、はっ、は、きっつ…っ」 「がんばれナマエっ!あとちょっとで交番!残り三分の一だよっ!」 「は、はっ、よくっ、しゃべれっ、ねっ!」 そんなに余裕なら先に行ってくれてもいいのに、ずっとそばにいてくれるモカマジマイソウルフレンド。そんな感じでわりと身体が追い詰められていて開始前の男子の会話なんか完全に忘れていたのに、この苦行を終わらすことだけを考えていたのに、それでも視覚情報って処理してしまう。往来の女性陣がやたらと目をハートにしていることだとか、その目線の先にやたらと高身長な男性がいることだとか、その人がまっすぐ自分を見ていることだとか、ていうかあまりにもその顔に見覚えがあることだとかね。 「…ナマエ」 ダメ押しの音声もちゃんと届いた。ああうんもう、ちゃんと処理するからとりあえずゴールするまで待っててほしいのカタクリお兄さまァ! どうにかこうにかゴールをし、持久走大会は簡単な表彰式をして解散になった。だがナマエの本当の戦いはここから始まるのであった…身構える必要はないよ、ないんだけどね。親友と連れ立って自転車をおして歩いていると、少し先に見慣れない車が停まった。車には詳しくないけど高そう。それだけは分かる、高そう。 「アー…モカ、わたし、ちょっと、知り合いが、きちゃったの、かもしんないから、先行って?」 「そうなんだ!じゃあわたしも寄るところあるから、また明日ね!ばいばい!」 「うん、また明日…」 親友が自転車で去るのを見送って、車に近づく。路地にはわたし以外いないしモカが反応しなかったのだから、つまり、そういうことですねはーい。 「…カタクリ兄さん?」 「ああ。久しぶりだな、ナマエ。スムージーのところへ行くんだろう?乗れ」 「はぁい」 兄さんに動揺は見受けられない。見聞色は存在しないが、まあ意外でもないな。今世の兄さんはクラッカー兄さんより少し大きいくらいで、何の違和感もなく車を運転している。そういうの強そうだもんな。なんでわたし以外の兄弟はハイスペック引き継ぎ転生なの?つらい。カタクリ兄さんはスムージーから事情を聞いているようで、特に慌てるだとか驚くだとかそういう様子もなかった。 「本当に幼いな。他の兄弟たちは同い年になることはあっても追い越したりはしていなかったが」 「クラッカー兄さんにも言われた。なんでだろうね?でも、昔よりはずっと歳も背も近いんだよ、ふふ」 「ああ、そうだな」 落ち着いた声を聴いているとわたしもなんだか落ち着いて会話できて、わたしたちはこの世界の話に花を咲かせた。あのカタクリ兄さんでもやっぱり最初は動揺したんだっていうから、ちょっと面白いよね。当然だけど。わたし?わたしは三回目だからさ。見たこともない科学が発展していること、逆に知っている知識がほとんど使えないこと…兄さんの素顔を誰も拒絶しなかったこと。兄さんは至極幸せそうで、それはわたしにとってもとても嬉しいことだ。ふかふかのシートを堪能しながら何気なく外を眺めていたら、車はやけに立派なレストランの駐車場に入っていった。…おい! 「兄さん?スムージーのところに行くんじゃ」 「腹ごしらえをしてからだって悪くはないだろう?さあ行くぞ、ナマエ」 「待て待てだめだめ待って無理ここは絶対学校ジャージのJKが入っていい店じゃない、お願い無理やめてアーーーー!」 勝てないんだよ腕っぷしに!!抵抗空しくわたしは簡単に抱え上げられ、生贄の子羊よろしく店の中へ運ばれていった。辛い…辛いよ…こんなのあんまりだよ…っ!こんな店に入ることが許されるのは食材としてだけだよ!(?)個室だから大丈夫みたいな顔してんじゃないよ!個室!?え?やば…。何その黒いカードこわ…。闇オークションで被害者を競り落とす億万長者のスーパー攻め様だけが持ってる架空のカードじゃないん…? 「美味いか?ナマエ」 「もったいなくて一口を咀嚼することをとめられないんだけど…」 「お前の好きな米だぞ」 「こんな高そうな米知らないです…」 マジで…。美味しい。こわい。美味しい。ダルダルのジャージのそでが目に入るたびに不釣り合いすぎて死にたくなるんですけど。 「…嬉しくなかったか?」 「んんっ…美味しいよカタクリ兄さん…!」 「そうか。良かった」 兄さんその顔ヤメテ!!!…はぁ。まぁ確かにな、前世と同じような甘やかし方だもんね。兄さんは本当にわたしを喜ばせたいだけなんだろうし、実際美味しいし、ホント持久走大会帰りでさえなければね。うわ、わたし汗臭いんじゃない?最悪。 「このくらいならいつでも食わせてやれる。おれも少しは料理をするが」 「わぁ、兄さん料理なんてするの?」 「ああ、いつでもお前に好きな物を食わせてやりたくてな」 平和に会話を進めようとしてるのに自然にその方向へ流れていくのやめてくれ!そのさ、ぎらぎらした目を向けるのもさ。 「みんなお前に会いたがっている。スムージーもクラッカーも、そう言ってただろう?」 「う、うん!でもわたしまだ学生だし、こっちに両親もいるからさ!ね!?」 「もちろんだ。挨拶もきちんと済ませなくてはな。お前のための家具だってお前の好みで揃えてやりたい。準備には少し時間が要る」 「う…と、えっと?」 えっと、ええと。 「…気が済むまで待ってやる、また狂言自殺で逃亡なんかされちゃたまらないからな。でもお前を迎えるのはおれだ。今度こそ、お前を守り抜いてやる」 「う゛、その節はどうもスミマセンデシタ…でっ、でもね兄さん、ここは闘いとかないし!守ってもらうものもねっ!」 「何もかもから、だ」 「あ、と、んん?と、兄さ、」 「おれはもうお前の兄じゃねェ。だがお前が望むならなんと呼んだっていい。…なんだっていい。お前に辛い思いなんか一つだってさせない。おれを選べばいい」 「え、選ぶとかないよ?ないでしょ?お兄ちゃんにとって兄弟はみんな兄弟でしょ?生まれ変わったって変わらないでしょ?」 「…ああ。でもお前は、」 そのとき、ものすごい轟音と共に建物が揺れた。ば、と兄さんに庇われる。まじですっぽりサイズ感なんだなァ〜…!ていうか何!?咄嗟に窓の外を見ると、真っ黒い黒猫みたいな形のばかでかい何かが思いっきり暴れていた。そうそう、プリキュアの微妙にデフォルメされた敵みたいな。………って、うええ!? 「そのフラグ回収されるやつだったか!?」 ばかでか黒猫はよくわからないまま光の何かによって消滅し、その光を浴びてわたしたちは気を失った。たぶん前後の記憶がなくなるやつですね。超展開にもほどがあるんじゃない!?でも助かったのは事実だ、(たぶん)モカありがとう!!マジマイソウルフレンド!!!! 「…ちゃんとパスポートは用意しておけよ。鞄は…なくていいか。着いてから買い揃えればいい」 「うん!!!!旅行楽しみにしてるね!!!!」 「…ナマエ」 「初めての海外旅行超楽しみ!!!!兄さんにまた会うのも楽しみにしてるよ!!!!!」 次に会うときまでにはこの謎の夢小説仕様を打開する方法を見出しとくね!!!!! (「…でもお前は、昔からずっと、みんなの特別だったろう」) |