あまえる

先輩五条×後輩夢主
五条にあまえるだけ 500文字程度



「先輩」
 言葉を発したあと、猫撫で声、という言葉がわたしの脳裏にふと浮かんだ。如何にも「構って欲しい」と伝わってしまう様な、そんな甘ったるい声を出してしまった。一瞬だけ自分で自分を戒めて、背後を向いている先輩の背中にぺたりとくっ付いた。しろい、けれど華奢ではないその首に手を回して、敢えて眼線を遮るようなかたちで空中で両の指先を絡めることで、意図的に先輩の読書の邪魔をした。彼の体温がじわじわと私を侵蝕してきて、心地よい温さがあちこちで広がって行った。
 なぁに、と帰ってきた先輩の声は、わたしを甘やかしてくれるときの声だ。その声を聞いて、彼の邪魔をするのはすぐにおしまいにした。腋の下の隙間にそっと手をやると、不意に腕が上がった。それに沿って自分の腕をうしろから回して、密着度が増す。ひとの体温は、気持ちがいい。……いや、多分この人だから安心するのだろうな。心地良さに安心しながらそう思考して、瞼を閉じて彼の心臓の音を聴く。とくとくと一定のリズムで鳴り続けるそれに再び安心して、このまま溶けてしまえたらいいのにな、最後にそんな事を考えて、思考はそこで止まった。ふわふわと浮かぶ様な感覚に陥ったのは、そのまま寝てしまったわたしをベッドに運んでくれる先輩だと気づいたのは次の日の朝だった。





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