エンガワに山葵

五条×夢主(ネームレス)
まわるおすし 670文字程度



「これは悟です」
「え。それ僕? どう見てもさっき来たエンガワ軍艦だけど」
「上が白くて、下は海苔で黒いから」
「オマエ、たまに変なこと言うよねぇ」
「この悟に、山葵を満遍なくつけます」

 回るお寿司で手に取ったエンガワ軍艦に対して、醤油皿の脇に塗りたくっておいた山葵たちを総動員してエンガワ……否、悟を虐めた。

「エッ! イタイ! ヒドイ!」
「ふふふ、なんか良い気分」
「えー、オマエだけズルい、僕もオマエみたいな寿司見つけるから! お返しの山葵攻撃してやるもんね!」
「いじわるするの? 私に?」
「…………やっぱり可哀想だからしない」
「悟クン、私に対して本当に甘いですねぇ。だから皆に尻に敷かれてる≠ネんて言われちゃうんだよ。いいの?」
「いーよ、本当だもん。可愛い彼女を甘やかすのは僕の特権だからね」

 プラスチックの薄い皿に二貫仲良く並んだエンガワ軍艦の、まだ虐められていないほうを、悟に奪われた。サングラスの奥で私を見つめる瞳は子供みたいにきらきらしているのに、それのもっと奥底はどろどろに溶けきれなかった砂糖みたいなあまさが含まれていて、いつの間にか私はその甘味の虜になっていた事実が少しだけ怖い。私のつけた山葵は意味を成さないなあ、なんて一瞬考えたけれど、出会った頃から悟の手中で甘やかされていた気もするな、という結論に至った。盗られた片っぽのエンガワ軍艦はいつのまにか既に悟の口の中。それのことは無かったことにして、私は虐めたほうのエンガワ軍艦を責任持って自分の口に含んだ。

 あれ? この山葵、辛くないや。




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