あなたと、夢と、ケーキと

高専五条×高専夢主(ネームレス)
怒った彼女の行動 900文字程度



「さとる。はい」
「……マジで? いや、部屋とかじゃねえの? 此処で?」
「此処で。それ以外は許さない」
「無断でパンツ借りてスミマセンデシタ」
「分かってるならよろしい。はい」
「俺、今謝っ」
「本当にそれだけで許されると思ってるの? コレぐらいで不問にしてあげる私の寛容さ、さとるくんは全く理解してないね?」
「ゴメンナサイ。スミマセンデシタ」
 
 フォークに乗せられ、切り分けられて形を変えられたケーキを、ずい、と目前に座る悟の前に差出す。
 落ち着いた雰囲気ではあるものの、そこそこの人気で人目も多い喫茶店だ。そんな中、思春期の塊みたいな男が「あーん」されるのを許してくれるだろうか。答えは、否。
 でも、恋する女子として、こんな倫理観最低変態悪趣味彼氏相手でも、フツーの恋愛っぽい事はずっとずっとしたかったのだ。
 だから、勝手に私の部屋に侵入した挙句、更に私の下着を勝手に拝借し、最低の極みをやらかしたこの男を、こんなカワイイ行為を受け入れるだけで不問にすると言っているのに、未だ小さく「よりによって此処でかよ」とか「テイクアウトして寮でやりゃいいのに」とかなんとか愚痴を言っている。寮でやったらデート感が無いのだ。分かってないなあ。
 早く諦めて食べろと言わんばかりの眼圧で悟の目を見つめると、観念したらしいこの男は、らしくなく小さく口を開けて、目の前に差し出されたケーキを貪った。フォークごと含んで、するりと抜けていく様は、流石見目麗しい男、様になっている。思った以上の破壊力で、きゅう、と胸が締め付けられた。
 
「…………コレ、だ……」
「満足したかよ」
「堪らなく……キュンってした……何も喋らない悟、最高。至高の域。世界の宝」
「は?」
「はい、もう一口どうぞ」
「ああ゛!? まだすんのかよ!?」
「一口だけって言ってないよ、私」
 悟に振り回されるヒトはたーくさんいるけど、その悟を振り回すのは、私だけで良いのだ。
 ぼんやりとした、あまたの対象に対してちいさいちいさい嫉妬心を自分の中に押し潰しながら、掬ったケーキを悟の口目掛けてえい、と無理やり押し込んだ。




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