夢のない地球に夢を抱く

「残念だよ」
「ええ、残念だわ」
 君たちとなら仲良くなれると思ったのになぁと、やけに表情豊かなアンドロイドがため息をついた。

「君の考えは否定しないけど、どうやら姉さんは納得いかなかったみたいだからね」
「私は平和を願っているだけなの。あなたの目指す世界は冷たすぎるし……なにより、花や森の居場所が無いでしょう?」
 無機質な世界は、姉さんの理想とはかけ離れている。それが彼には理解できないらしかった。
「パーフェクトワールドの素晴らしさがわからないなんて、やっぱり人間は愚かだよ」
「愚かなのは、争う人たちだわ」
「まあ、そうかもしれないね」

「……姉さん、そろそろ」
 さっきからアスタは口を開かず、ただ急かすように視線を送ってくる。僕がLBXたちに話し掛けているのを見たときと、同じような顔をしていた。きっと、この会話に意味が見出だせなくて退屈なんだろう。
(一体いつまでそんな機械と話してるつもりだ?)
(姉さんの気が済むまでさ)
(ふん、勝手にしろよ)
 不機嫌なアスタを一瞥した姉さんは、少し名残惜しそうにミゼルの手に触れた。

「消えろ」
 紫色の光が侵蝕を始める。指先から消えていく体を眺めて、彼は諦めたように微笑んだ。
「この星というシステムを、君たちが良くしてくれることを祈っているよ」
「さよなら、戦いを無くそうとしてくれた人。あなたも新しい未来を気に入ると思うわ」
「だと、いいね。地球をよろしく」
「任せてよ。それじゃ、さようなら」
「…………じゃあな」
 最期の一つが見えなくなるまで光の粒を見送って。

「行きましょうか」
「うん」
「そうだな」
 彼から託された思いを、そっと胸の奥にしまった。
 やろう。僕たちならできるはずだ。



#夢のない地球に夢を抱く

お題お借りしました mintxgreen



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