裏 | ナノ
理由そして言い訳
正直、嬉しかった。
音羽先輩が卒業してからは、とんとセッションができなくなった。とにかく時間が合わなかった。相手も忙しい中楽しい事があるとすぐに行ってしまう。僕も僕で足元をより固め更に上へ行くためにできる事はしたかった。より強く自分を持ち、楽しみ、相手に伝え、楽しむ。なかなか大変だけれど、何度か海外に渡り色んな価値観を知り、同時に皆同じなのだと思った。矛盾しているのにそう思った。
そして、この間空港で半ば呆れたような顔で部活仲間に言われた。 『お前も大分音羽先輩に影響されてんな』 『楽しみたいっていう行動力とか』 そんな会話を聞きながら、僕は予定変更を決意した。思い立ったら即日。でしょう、先輩。二人揃って新しい仕事に行く彼らに挨拶した後、音羽先輩に連絡を入れた。
「セッションを、しましょう」
それが、昼間の事。
「……っ、ぇ…?」 「オイ、…オイ?」
まさぐる手と降ってくる声が、不安を伝えてきた。
「なぁ」
訂正する。不満を伝えてきた。 不満なのは男に組み敷かれている僕の方だ。しかもいつの間にか半分ほど脱がされている。服を来ているとも脱いでいるとも言えない。
「…な、ですか」 「オイ」
付け加える。攻撃してきた。 よりによって太ももの内側をつねってきた。僕にだって充分にそういう知識はある。男女が絡むような体勢で変なところにそうされるのは困るんだ。
「止めて下さいよ、それは」 「何がだ」 「そんな所に攻撃しないで下さい」 「…キスマークじゃああるまいし」
その言葉と同時にうなじを撫でられる。
「っう…!」
一瞬意識がビリビリとする。慣れない感覚に手が音羽先輩の服を掴んだ。片手は万一の為に口を塞ぐ。
「なあ…?付けないでおく。そんな関係でもないだろう」
音羽先輩の手がとうとう僕の一番の急所に触れた。先程から熱を持っていた。狭い中で存在を主張するソレを、決して触ろうとしなかった。触って欲しくなかった。
「……っ、……ふ」
口を塞ぐ指の隙間から息が漏れ、足を動かして気を紛らわす程度の抵抗が限界だった。そもそも僕の足を動かしても先輩の足に当たるだけ。力の入らない体ではたかが知れている。静かに確かめるように、徐々に強くなっていく指。ふいに先端に触れる。
「あッ…!」
クチリとした音が布の中でするのと頭の中が支配されるのはほぼ同時。ビクリと足が跳ねる。そして触れる。音羽先輩がクッと腰を寄らす。
「刻阪。分かるだろ」
学校でよく見ていた強気な顔だった。
「なぁ、」
先輩は腰を寄らしたまま、指をまた動かして、言った。
「オレもだ」
いつだか、音羽先輩の暴君たる所以は赤ん坊だからだと、聞いた。構って、欲しいんだと。 何も言わずに足を腰に擦り付けた。恥ずかしさは、更なる刺激に上書きされた。
「悦ばせたいなら鳴け」 「っ、女性では、ないので…」 「意地を張るな」 「んんッ、ふ…」 「声出す方が楽だぞ」 「ひィあ…っあ、」
顔のすぐ近くで声がしたと思ったら指で布が外され外気に晒され、もう耐えられなかった。顔を手で覆う。自分の信じられない声もあらぬ所の音も頭になかった。僕は先輩からの刺激に支配された。
「せん、ぱァ… …アっ…も、も…ッ!」 「イクならイけ」
先輩の下で首を振って、ただただ限界を伝えるしか無かった。
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