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二人
二人
『知ってる?二卵性双生児は、一卵性双生児よりも兄弟に近いのよ。双子自体が兄弟だけどね』
その頃の僕は小学生。双子だとか理科の話題になるとより分かった気になろうとしていた。
姉さんから教わったそれはまぎれもなく人体の神秘で、保健体育だとかよく分からない話で言われるより魅力的だった。 その癖に頭には『睨んせぃ』とか『ソーセージ』とかが飛び交い、最終的には
「ぼくたちは、双子だ!」
こうなった。
元々、男は女親に女は男親に似ると聞く中で、よく似てると言われて育った。嫌ではなかった。姉のハッキリした性格は好ましかった。だから、その姉が双子みたいだねと言うのも嬉しくて、ニコニコしたまま、キスをした。 驚いた姉さんの頬を両手で包んで、ちぅと唇をくっ付け、そのまま抱き締めた。
「楓ー、だいすきっ!」
普段言えない分を乗せて、通じるように。 甘えていいよ。甘えられる男になるよ。見る目のない男子は、見なくていいんだ。
「ん……ありがとう」
僕がいつか、姉さんをお嫁さんに貰うから。
お風呂に入る直前に姉さんが帰宅したものだから、懐かしいことを思い出した。 当たり前だが、なんだかんだあの後もっと良い彼氏ができたり別れたり口説かれたりとそれなりらしい。
「ねぇ、二卵性でも双子は双子だよね」 「何 突然」
キチンと顔を合わせた途端に例の話題。何だろう、このタイミング。
「当たり前だけどさ、双子と兄弟って、結構違うのよね」 「…双子も兄弟でしょ」 「環境が全く変わるじゃない。年子だって双子とは全く違うわ」 「だからもっと違うって?」 「───違わない?」
さらりと腕が伸びて僕の前髪をさらう。細い指の向こうに、身長差で上目遣いになってる姉さんがいる。壊さないように、前髪に手をかざした。
「このところが地毛の色なら、今より似るよ」 「環境の話し、よ」 「分かってる」
僕の指の隙間から姉さんの瞳がチラリと。
「環境が違ったって」
長い髪を掬う。指先を地肌に滑らせる。睫毛が震えた。
「どっちにしろ楓は楓」
うなじに指を差し込み口付けるとフワリと楓の香り。そのままキツく抱き寄せる。気付いてるよね。もうとっくに君の身長を越えた。
おかえりを、刻み込む。
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