(嘘の笑顔の意味)


初めはなんとも思ってなかった。
頭が良くて、運動もできて、部活では早くも副部長。
同じ部活仲間として純粋にすごいなと思ってた。
ただ、それだけだった。
それがいつからだろう…。
彼の視界に少しでも入りたい。
短くてもいいからそばにいたい。
そう思うようになったのは、いつからだろう…。
気づいた頃には、もうあなたのことで頭がいっぱいだった。
こんなにもあなたを好きになってた。

「みょうじ」
『赤司くん。どうしたの?部活以外で話しかけてくるなんて珍しいね』
「部活の連絡でな」
『あ、うん…。それで?』
「今日桃井が偵察に行くことになっていてな、一人で大丈夫か?」
『今日特別なにかしないといけないことは?』
「今日はない」
『だったら大丈夫』
「そうか。よろしく頼んだぞ」
『了解です』
「では、また放課後に」
『うん。わざわざありがとう』

用件だけ伝えて、彼は教室に戻っていった。
そんな彼の背中を見つめる。
どうして、こんなにも好きになったのだろう…。
叶わない恋なのに…。
一度、日曜日の部活のお昼休憩に聞いてみたことがある。
もちろん、話の内容は恋愛について。

『赤司くんは好きな人とかいないの?』
「藪から棒に、だな」
『ちょっと気になって』
「…どうだろうな。だが、きっとこの先誰かと一緒にいるということはないだろう」
『どうして?』
「根拠はないよ。ただ自分の隣に誰かがいることが想像できないんだ」
『もし、赤司くんに好意を寄せている人が居たら?』
「さぁ、どうだろうな…」
『考えるの?』
「一応な。こんなオレに好意を持ってくれているお礼としてな」
『でも、想像できなかったら…』
「断るだろうな。その人に申し訳ない」
『そっか…』
「そういうみょうじはどうなんだ?」
『んー?気になる?』
「いや、話したくないならいい」
『別に隠すことじゃないけどね。いるよ…。もうずっと前から』
「伝えないのか?その気持ちを」
『…伝えられない、かな?』
「伝えられない?それはみょうじに問題があるのか?それとも相手に?」
『んー…どうだろ。でも、その人は自分のそういう姿を想像できないんだって』
「オレと同じか…。珍しいやつもいたもんだな」
『ほんと、そうだね…』

うまく笑えているだろうか…。
この瞬間、私のこの恋はかなわないものだと知ってしまった。
だったら、赤司くんを困らせたくはない。
そして、自分の気持ちを伝えたことでお互いに変な距離を作りたくない。
だったら、こうして他愛もない話をする程度でいい。

放課後。
練習もひと段落して、みんなドリンクなどを飲んで休憩していた。
そのときにふと思って、この前話していたことを隣にいる赤司くんに聞いてみた。

『赤司くん』
「どうした?」
『この前話したこと覚えてる?』
「好きな人がどうとか、か?」
『そうそう。赤司くんはどう思う?私の恋、叶うかな?』
「さぁな。オレはなんとも言えないが…。自分次第じゃないか?本当にその人のことが好きなら、最後には伝わるだろう」
『うん…。そうだね…』

赤司くんは綺麗に笑った。
正確には笑ってみせた。
いろいろと赤司くんと一緒にいる時間が多かったからなのか。
それとも、私が彼のことを好きになったからなのか。
それは、わからないけど…。
でも、この前よりかはわかる。
赤司くんのこの笑顔の意味を。
ねぇ、赤司くん。
もう分かっちゃったんだ。
その作り笑いは、それ以上誰かを自分に近づかせない為だって。
特定の人を隣に置かないって。
もう分かってるよ。

『でも、赤司くんは違うでしょ?』

私の言葉に目を見開く彼。
ほら。
だから、言ったでしょ?
もうわかってるんだ。
あなたのその瞳に私が映ることはない。

もう知ってるんだ。


end

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