(不安なときこそ)


ある日の休日。
せっかく学校が休みだというのに、私は家の自分の部屋のベッドの中にいた。

『ごほっ…』

昨日の帰りに雨に打たれたのが悪かったのだろう…。
朝起きた時には怠かった体。
まさかと思い熱を測ってみると、温度計は通常ではでるはずもない数値を表示していた。

『さいあく…』

今日に限って家族は家にいない。
どうせ部活だろうと思ったのか、お母さんの実家に遊びに行っている。
私を置いて。
そう言う日に限って部活は休み。

『とりあえず薬…』

そう思ってベッドから立ち上がると、ちょうどいいタイミングでインターホンが鳴った。
とりあえず、起こした体を動かして玄関に向かった。
扉を開けるとそこには大好きな彼の姿が会った。
私の恰好を見てか、少し目を見開いていた。

『和くん…?』
「よっ!もしかして今起きた?」
『えっと…』

風邪をひいている。
なんて彼に知られたらただではいられない。
彼のことだ。
看病するなんて言いかねない。

「家の人は?」
『お母さんの実家に遊びに行ってる』
「そっか。…あがってもいい?」
『えっと…』

どうしよう…。
上げてしまえば絶対に風邪をひいていることがバレる。
かといって、ここまで来てくれた彼を帰すのも気が引ける。
それに熱があるときは、なぜか心細い。
そんなときに大好きな彼が現れたのは予想外だった。

「ってか、具合悪いの?」
『なんで?』
「顔色悪い」
『うっ…』
「あがるぞー」
『だめだよ!移っちゃ大変だし!』
「でも一人なんだろ?」
『そうだけど…』
「ほらほら病人は大人しく寝てる!」

いつのまにか玄関まで来ていた彼は、私の背中を押して部屋へと向かわせる。
あぁ…。
これはもう諦めた方がいいな…。

「熱は…?」
『…ない、と思う』
「ほんとにー?」

そう言ってベッドに私を寝かせた後、自分の額を私の額に当ててきた。
あ、やば…。

「これで熱ないとかよく言えるなー?」
『うっ…』
「ったく、具合悪いときぐらい素直に甘えなさいな。薬は?」
『まだ…』
「んじゃまずは薬だな」

水とってくるわー。
そう言って彼は私の部屋から出て行った。
でも、なんだろう…。
彼が家にいるというだけで、すごく安心する…。

「起きてる?」
『ん、起きてる』

部屋に戻ってきた和くんから水を受け取って薬を飲んだ。
しばらくベッドに寝転がっていると、ギシッとベッドが揺れた。

『和くん…?』
「ん?」
『…ここにいてね』
「言われなくてもここにいるって」
『ほんと…?』
「なんなら添い寝しよっか?」
『…うん。して』
「!」

冗談半分で言ったのだろう。
まさかの私の返答に少し驚いている和くん。
和くんの服の裾を少しつまんで引っ張った。

「はいはい。お姫様のおうせのままに」

ゆっくりと私を抱きしてくれる和くんに、たまには風邪を引くのも悪くないかなっと思ってしまった一日だった。


end

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