(彼の魅力に捕まった)


ある日。
社会科の先生に頼まれて何人かの教科書を集めていた。
最後の一人となったのは、男子バスケ部の紫原敦くん。
きっとあの大きさなのですぐに見つかるだろうと思い、第1体育館に向かった。

『(…ちょっとしんどいですね…)』

朝からだるかった体。
休んでも家には誰もいなくなるので、とりあえず学校に来た。
そんな体を引きずるように体育館に向かっていると、急にめまいが襲ってきた。

『!』

段々と傾いた体。
襲ってくるであろう衝撃に目を瞑った。
が、いつまで経っても想像していた痛みは襲ってこない。
不思議に思っていると頭上から声がした。

「大丈夫か?」
『!?』

声に驚き上を向くと、至近距離にバスケ部部長である赤司征十郎くん。

「体調でも悪いのか?」
『あ、あの…。すみません…』
「いや。…君はみょうじなまえさん、だったかな?」
『どうして私の名前を知っていらっしゃるんですか…?』
「さぁ。どうしてだろうね」

そう言って笑った赤司くんはすごくきれいだった。

『あの…。私貧血持ちなんです…』
「貧血?じゃあ朝から顔色が悪かったのは…」
『え?』
「いや、なんでもない。それよりどうしてここに?」
『あ。紫原くんのノートを集めに来たんですけど…』
「紫原の?」
『はい』
「わかった。一緒に行こう」
『え…。でもそれでは赤司くんの迷惑になります…!』
「いや、ちょうど第1に戻ろうとしていたところなんだ」
『そうだったんですか…』
「それにまた倒れられても困るからね」
『それでは…お願いします』
「あぁ。行こうか」

赤司くんのおかげで倒れずに済み、そしてノートも無事にすべて集めることができた。
その日から、なにかと赤司くんと一緒にいることが多くなった。

「みょうじ」
『赤司くん』

昼休みになると、私はバスケ部員でもないのに一緒に彼らとお昼をとるようになった。
初めは怖くて仕方なかったのを覚えている。

「一つ疑問だったんだが、みょうじは部活は?」
『私はしてません…。文武両道のような器用なことはできませんから…』
「そうか」
『それに貧血でいつ倒れてもおかしくないですし…』
「確かにそれもそうだな」

赤司くんと一緒にいる時間が増えて、私の中の赤司くんに対する気持ちが変わっていった。
赤司くんの本当の優しさを知ったからこそ、私は赤司くんのことが好きになった。

「赤司くんって絶っ対になまえちゃんのこと好きだよね」
『!?ごほっ…』
「あぁ。それオレも思ってたぜ」
『な、なんですか…それは…』
「赤司くんってなまえちゃんにすっごく優しい顔するよね」
『き、気のせいではないでしょうか…?』
「いや、気のせいじゃねーだろ」
「なんの話だ?」

桃井さんと青峰くんと話をしていると、私の後ろには赤司くんがたっていた。

『赤司くん。遅かったですね』
「あぁ。少し生徒会の方に顔を出していたんだ」
『そうだったんですか』
「それで、なんの話をしていたんだ?」
『え、えっと…』
「赤司くんがなまえちゃんのこと好きかってこと話してたの!」
『も、も、桃井さん!』
「………」
『(うぅ…。赤司くん黙ってしまいました…)』
「で、どうなんだよ?」
「どう、とはなんだ。青峰」
「好きかってことだよ!」
「…お前に言うつもりはない」
「はぁ!?」
「みょうじ。ちょっと来い」
『え。あ…はい』

赤司くんに呼ばれて私は彼の後ろについていった。

『(なんでしょうか…。さきほどの話のことでしょうか…)』
「みょうじ」
『は、はい…』
「フッ。何をそんなに固まっているんだい?」
『えっと…』
「さっきの話。気になっているのか?」
『う…。実は気になってます…』
「そうか…」
『(…あぁ。また黙ってしまいました…)』

赤司くんは顎に手を当てて、少し何かを考えているようだった。
その沈黙が何だか痛くて、顔を俯かせてしまった。

「みょうじ」
『は、はい!?』

あぁ…。
声が裏返ってしまいました…。
赤司くんも少し笑ってます。
恥ずかしいです…。

「誰にも言わないと約束できる?」
『言いません!』
「そう。なら教えてあげるよ」

そう言って近づいてきた赤司くん。
赤司くんの口が私の耳元に来た。

『(あわわ…)』
「みょうじ」
『は、はい…』


――好きだよ


『!!』

耳元で聞こえた声。
驚いて赤司くんの顔を見たら、綺麗な笑顔だった。

『(あぁ。私はこの笑顔に惚れてしまったんですね…)』
「覚悟しておいてね」

どうやら私は、彼の魅力から逃げることはもうできないみたいです。
それほどまでに私は彼に惹かれてしまった。
でも、この綺麗な笑顔を独り占めできるなら、彼の魅力に捕まってもいいと思ってしまう私は重症でしょうか…?


end

← |

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -