(そっと内に秘めた想い)


朝からずっと降りつづけている雨が体育館の屋根に当たって雑音を生み出す。
そんな音が響いている体育館からは、雨の音とは全く違う他の音が響いていた。

『まだやってたの…?』

体育館に響いた声に、ボールをついていた彼はこっちに振り向いた。

「なまえか…」
『ほどほどにしたら?』
「いや…。ここでやめるわけにはいかない」
『…気にしてるの?…初戦敗退のこと……』
「…当たり前だろ」
『………』

思いつめた彼の表情に言葉が詰まる。
そんな責任を背負った背中に、また新たな重荷が背中に乗っかってしまったのはつい最近の話だ。

「…オレが部長でいいと思うか?」
『どうして?』
「………」
『私は適任だと思うけど』
「…そんなことないだろ」
『でも実際、笠松のリーダーシップはいいものだしキャプテンには向いてると思うよ』
「………」
『それに、インターハイのことに責任を感じてるのであれば…。キャプテンになって日本一にする。それで十分だと思うけど…?』
「…監督も同じようなこと言ってたよ」
『だろうね』
「…まっ。お前がそう言うんなら頑張ってみるか」
『次こそは獲ろうね。日本一』
「あぁ」
『推薦の子。キセキの世代の子なんでしょ?』
「まぁな」
『そんな子をもらえたんだから、頑張らないとね』
「そうだな」
『私も精一杯サポートするから』
「あぁ…。頼んだ」

そして、また私に向けた背中。
先程とは少し何かが変わった気がした。
胸の内に秘めた、この"想い"は打ち明けることはない。
きっと打ち明けるとしたら、それはすべてが終わったとき。

「なぁ…」
『ん?』
「ありがとな」
『どういたしまして』

今はこれで十分。
あなたの一番近くで、あなたの背中を見ていく。
ただそれだけで満たされるから。

『頑張ろうね』
「あぁ」

そう言って笑い合った。
そんな2人がいる体育館には、もう雨の音は止んでいたのだった。


end

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