(ファーストキスは…?)


学校から帰ると何故かリビングが騒がしかった。
靴を見ると一足多いからきっと大ちゃんママが来ているんだろう。
部屋に戻る前にお弁当をだすためにリビングの扉を開けた。
すると予想通りだ。

『ただいま』
「お帰り。今日は早かったね」
『うん。大ちゃんが早く帰りたそうだったから寄り道せずに帰ってきたの』
「そうだったの。ねぇなまえ、これ見てみなさい」
『何?』

私はお母さんに言われてテーブルに広がれているものを見た。
それは一冊のアルバムで小さい頃の私と大ちゃんが写っていた。

『どうしたの、これ』
「整理してたら出てきたの。懐かしくて二人で見てたところよ」

アルバムの写真を見てみるといろんな顔をした小さい頃の私たちがいっぱいいた。

『こんな顔、撮らないでよ…』

それは私が泣きじゃくっていてその私の頭の上に大ちゃんが小さい手を乗せている写真だ。

「つい撮っちゃったのよ」
『もう…』

私はアルバムを机に置いてリビングの扉の方へ足を向ける。

「あら、もういいの?」
『うん。大ちゃんが待ってるし』

そう言って私はリビングを出た。
本当に仲がいいわね、というお母さん達の会話は私の耳には入らなかった。
階段を上って部屋に入ると既に大ちゃんがベッドにうつ伏せで寝転がっていた。
なんだかベッドが小さく見える…。
部屋に入った私を顔だけ動かして見る。

「……遅かったじゃねーか」
『ごめんね。お母さんたちがアルバムを見てて』
「あ?アルバム?」
『うん。私たちの小さい頃の写真』

私はそう言って着替えるために大ちゃんに下を向くように指示をした。

「…んなこと気にすんなよ」
『気にするよ!』
「もっと恥ずかしいことしてんだろ」
『バカ!!』

私は大ちゃんが下を向いている間に素早く着替えた。

「…そーいや…」
『んー?』
「ガキのとき迷子になったよな」
『そうだったね。確か大きい公園だったよね?』
「おー」

大ちゃんは頷きながら着替え終わった私を腕の中に入れ抱きしめた。

「あんときは、マジで泣きすぎだったからな」
『あれ?でも、泣き止んだよね?』
「キスしたら泣き止んだ」
『……………』
「んだよ」
『もしかして…ファ…』
「あー…。たぶんな」
『…』
「…なに赤くなってんだ」
『だ、だって…』
「ったく、今さら照れることあるかよ」
『えっ…ちょっ…』

そう言って大ちゃんは私を抱き寄せてキスをした。

「ほとんどの初体験はオレとだろ」
『う、嘘…』
「あ?んな冗談言うわけねーだろ」
『あ、アホ峰!』
「あ?」

私はくるっと寝返りを打って大ちゃんに背を向けた。
後ろで大ちゃんが鼻で軽く笑った。

「んだよ、文句あんのか?」
『…バカ』

正直、嬉しかったけど言葉にしては言わなかった。
振り返って大ちゃんに不意のキスをした。
その後の大ちゃんの顔が赤く染まっていたのを見て可愛いと思っていたことは胸の中にしまっておいた。


end

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