(何気ない日常)


朝。
目を覚ますと、視界には大好きな彼の背中。
ベッドにもたれて床に座り、彼の好きな小説を読んでいる。
そんな彼の首に後ろから絡み付く。

「!…おはようございます」
『ん…。おはよう』

朝が苦手な私は、彼より早く起きたことがない。
たとえ、こうして彼の家に泊まりに来ても。
まだ少し寝癖のついている髪に触れた。

『また寝癖ついてる』
「ほんとですか?」
『うん。高校の頃から変わらないね。寝癖』
「そうですね…」
『でも、そこが好き』
「僕も朝が苦手ななまえさんが好きです」
『うん。ありがとう』
「…少しお腹が空きました」
『朝ごはん作るね』
「お願いします」

テツくんの家に泊まりにきたときは必ず私が朝ごはんを作る。
もうなんだかそれが当たり前のようになってきた。
大学に入って一人暮らしを始めたテツくん。
狭くも広くもないアパート。

『今日はどうする?どこか行く?』
「どうしましょう。たまにはゆっくり過ごしますか?」
『賛成ー』

少し悩みながらも必ず案を出してくれるテツくん。
そんなところも好き。
一緒に朝ごはんを食べて他愛ないことを話して、お昼ご飯はどうしようか。
なんて呑気に決めて、散歩がてら食べに行く。
ご飯は必ず半分ずつお金を出す。
特に理由はないけど。
帰りに少しストリートバスケのある公園によって2人でバスケして、そしてまたアパートに帰る。
窓を開けると気持ちい日差しに睡魔がやってきて、一緒にお昼寝。
晩ご飯は一緒に作って一緒に食べる。
こんななんでもない日常でもテツくんがいるだけで十分幸せだ。
荷物を持って自宅に帰る。
必ず家まで送ってくれるテツくん。
家の前で触れるだけのテツくんらしい優しいキスをして、テツくんの背中が見えなくなるまで見送る。
家に入って部屋に戻り、しばらくしてから鳴った携帯を手にとるとテツくんからのメッセージ。
それはいつもと変わらない。

《帰宅しました》

というシンプルな文字。
「無事に着いたんだね」と送ると「はい。無事に着きました」とすぐにきた返事。
少しメッセージのやりとりをしてから、お互い夢の中へと落ちていく。
初めて会った時は、まさかテツくんとこんな関係になるなんて思ってもいなかった。
高校の頃にマネージャーしてよかったと心から思った。


end

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