(一時の休憩)


仕事を一段落つかせてから、お昼ご飯をとる。
食堂に行くと見知った顔が2つ。

『お疲れ様です。緑間先生に高尾先生』
「おっ。なまえじゃん。お疲れー」
「高尾。ここでは苗字で呼ぶのだよ」
「えー。別にいーじゃん。今更だろ?」
『まぁ。それもそうだけどね』

高校から、ずっと私たちは一緒だ。
2人はバスケ部員。
私はマネージャーだった。
そこから大学・就職先まで、ずっと一緒にいる。

「そういえば、この前オペしてもらった子。順調だぜ」
『それは良かった』
「さすがは若手小児外科の天才先生!」
『おだてても何も出ないよ。天才内科医さん?』
「うわー。天才に天才って言われちゃったよ。どーする、天才外科医さん?」
「うるさいのだよ。2人とも」

私たちは業界から一目置かれている。
和成は患者の状況・年齢などを観察し、患者の状態を最も良い状態でオペできるように調整するスペシャリストだ。
そして、なによりも人柄のよいせいか、患者からよく好かれ、患者との間の壁を作らない。
だから、こそ患者にあった内科的治療が提供できる。
真太郎は何でもこなす外科医。
特に救急で、その腕が良く分かる。
的確に判断をし、素早く処置をする。
若手だが同僚と比べれば経験値は高い。
それは彼は医療道具も、ほぼないに等しい国で何年間も戦争で傷ついた人たちを助けてきたからだ。

「………」
『あ、そういえば。和成さ』
「ん?」

目の前で会話をするなまえに目をやる。
先程、オレ達のことを天才と言ったが、やつも天才だ。
小児外科の天才。
特に心臓のオペのスペシャリスト。
一つ一つの技術が繊細で高く評価されている。
小児科以外でもオペなどをする。
救急でも、活躍するぐらいだ。
腕は確かなことが分かる。

『…真太郎』
「なんだ」
『それ…。今日のラッキーアイテム?』
「それ以外に何があるというのだよ」

真太郎の横に置かれているそれ。
高校時代によく使っていたもの。

『懐かしいなぁ。就職してからはボールなんて全然見ることなかったし』
「これ見てるとやりたくなんだよなー」
『久しぶりに真太郎の3Pも見たくなるよね』
「さすがにもう無理なんじゃね?」
「オレを誰だと思っているのだよ、高尾」
「マジで言ってる?」
『そういう和成も"鷹の目"は健在でしょ?』
「まぁなー」
「だが、秀徳時代となんら変わっていないとは言えないのだよ」
「それ、オレも」
『やっぱりバスケしなくなると、そうなるんだねー』
「でも、真ちゃんの3P。見たくなってきたわ」
『だよねー。でも、ボールなんて家に置いてあったっけ?』

私と真太郎は同棲している。
まぁ…。
そういう仲なので。

「ユニフォームなどが置かれている所にあったのだよ」
『私、そんなとこに置いたっけ?』
「置いたからあったのだろう」
「ったく、妬けるねー。もう結婚したら?」
「うるさいのだよ、高尾」

話が脱線しそうな所に、私と真太郎のPHSが鳴った。

「あーらら。急患?」
『みたい。和成。これよろしく」
「はいよー。行ってらっしゃい」

私たちはトレイを和成に預けて、急いて救急病棟に向かった。

『なに…。これ…』
「………」

救急病棟に着くと、そこにはケガ人が続々と運ばれ、人で溢れかえっていた。

「緑間先生!」

一人の看護師が真太郎を見つけ、声をあげる。

「一体、何があったのだよ」
「近くで大型バスの事故があったみたいで…!」
「なるほど。なまえ。お前は子どもを中心に処置していけ」
『わかった』
「オペに入る!すぐに準備をするのだよ!」
「はい!」

真太郎は白衣を脱ぎながら、オペ室へと向かった。
その背中を見送ったあと、私は白衣の袖をまくった。

『さてと、やりますか!そこの看護師さん!手伝ってください!』
「あ、はい!」

疲れた体に鞭を打ちながら、次々に子どもを診ていく。

「みょうじ先生!」
『なに!?』

目の前にいる子を処置しながら返答する。

「心臓病を持っている子が発作を起こしています!年齢は5歳!」
『こんな時に…。PHSでかず…。高尾先生に連絡を!』
「はい!」

そして、その場が落ち着いたのは3時間後だった。
内科の医局のソファーに真太郎と同じように身を預ける。
それを和成が自分のデスクの椅子から見つめてくる。

「2人して同じことすんなって」
『もう限界…』
「さすがに疲れたのだよ…」
「ったく…。コーヒーでも入れてやるよ」
『ん。ありがと』

そう言って、和成は給湯室に消えた。

『ほんっとに疲れたぁ〜…』

隣にいる真太郎にもたれかかった。

「…なまえ」
『ん?』
「少し痩せたか?」
『んー…。たぶん』
「軽くなっているのだよ」
『ほんと?』
「もう少しちゃんと食べろ」
『んー…。頑張る』
「なまえ。お前当直明けだったのではないか?」
『………』
「おい」
『………』
「…?」

不思議に思い、顔を覗くと、瞳は閉じられ静かな寝息が聞こえる。

「フッ…」

しばらく、そのままにしていると高尾が戻ってきた。

「あれ。寝ちゃったん?」
「みたいなのだよ」
「あーらら。もしかして当直明け?」
「あぁ」
「そっか。なら、しばらく寝かせてやるか」

そう言ってコーヒーのカップを差し出してきた。
そのカップを受け取る。

「それに、せっかく大好きな真ちゃんの肩で寝てるんだし?」
「ちゃかすな、高尾」
「はいはい」
「………」
「高尾先生!310号室の山本さんが」
「オッケー。すぐ行くって言っといてー」
「わかりました!」

いきなり医局に現れた看護師は用件だけ伝えて、すぐに消えた。

「んじゃー、行ってくるわ」
「あぁ」

白衣に腕を通しながら、医局を出て行った高尾。
高尾の背中を見送ったあと、コーヒーを飲みほして、目を瞑った。
聞こえるのは、時計の秒針の音となまえの寝息。
少し口の端をあげてから、意識をとばした。
医局に戻ってきた高尾にちゃかされたのは言うまでもないがな…。


end


(真ちゃんとなまえの寝顔。マジで癒しだったわー)
(黙れ、高尾)
(何の話?)
(何でもないのだよ!医局に戻るぞ、なまえ!)
((あとで和成に聞こ))
((ププッ。照れてる、照れてる〜w))

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