(あなたの体温)


ダムダムと響く音。
リングを通った音。
リングを通ったボールは上下に跳ねた後、静かに転がった。
その場に流れる沈黙。

「いつまでそこにいるつもりなのだよ」
『さすが真ちゃん。ムカつくぐらいの3Pだね』
「………」
『また、そーやって無視する』
「………」
『ほんと変わってない』
「そう言うお前も変わってないのだよ」
『それは真ちゃんが私のこと知らないだけじゃない』
「………」
『ま、いーや。真ちゃんは私なんて興味ないだろうし』
「………」
『真ちゃんを裏切って赤司くんについていったのは私だし?』
「………」
『…洛山は負けない』
「………」
『赤司くんは負けないわ』
「それはやってみなければ分からないのだよ」
『洛山には赤司くんだけでなく私もいる』
「………」
『秀徳のスタメンも個々人の能力も計算できてる。それでも勝つのは私たち洛山よ。真ちゃんたちには私たちに勝てる勝算はゼロよ』
「例え勝算がゼロだとしても、オレは諦めずに3Pを決める。それが人事を尽くすということなのだよ」
『…それでも勝つのは赤司くんよ。赤司くんは最強。負けるなんて考えれないわ』
「だとしても、オレは人事を尽くすだけなのだよ」
『…次会うときは敵同士よ』
「そんなことは分かっているのだよ」
『WCで勝つのは赤司くんよ』
「………」
『明日はお互いいい試合をしましょう』
「あぁ」
『じゃあね、真ちゃん』

真ちゃんに背中を向けた。
ごめんね、真ちゃん。
私はあなたのそばには戻れない。

「…なまえ」
『!』

掴まれた左腕。
瞳に溜まるもの。

「─────」
『っ!』
「明日会おう…」

私に背を向ける真ちゃん。
頬を伝うそれ。

『…ずっと待ってる』

─必ず赤司の元から連れ戻す
覚悟して待っているのだよ─

『信じてるからね、真ちゃん』

掴まれた左腕に残るあなたの体温。
その暖かさに包まれながら涙を流す。
寒い冬から守るのは左腕に残る体温だった。


end

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