(頼れる年下に)


気になる人がいる。
その人は相棒でもあり、先輩でもある氷室辰也の姉だ。
練習試合を見に来ていた彼女を何回か見たことがある。
弟の氷室と同じ黒髪。
前髪も同じように長いが目は隠れていない。
とても落ち着いていて、お姉さんなんだなと見ただけで何となく分かる。
弟がお世話になっているからと何度かお菓子をくれた。
普通の人からすれば、さほど小さくない身長もオレからすればみんな小さい。

「アツシ」
「んー?なにー?」
「姉さんがアツシのことを気に入ったみたいでね」

ドクンッ。
そう心臓が大きく脈打った気がした。
気に入ったというのは弟の友人として?
弟のチームメイトとして?
それとも…。
いろんな感情が湧き上がる。
そんなオレの考えていることが分かったのか、目の前にいる彼は小さく笑った。

「姉さん言ってたよ。アツシを一人の男として気に入ったって」
「!」
「よかったな。オレはずっと前から2人を応援していたんだ」
「もうちょっと顔に出してよ。分かりにくい…」
「これでも出していたつもりだったんだけどな」

そんなことを話していたら部屋の扉がノックされた。

「はーい」

ノックに軽く返事をし、室ちんは扉のほうに向かった。
2年からきた室ちんは体がでかいからと一人部屋だったオレのところに空きがないからと同室になった。
ベッドから身を乗り出して覗くと、そこには先ほどまで話の中心人物だった室ちんのお姉さん。
やはり、どことなく似ている。
さすがは兄弟だなと思った。

『敦くんもいたんだね』
「あ、うん」

さっきまであんなことを話してたから少し照れくさい。

「姉さん、上がっていきなよ。オレは少し用があるから出て行くけど」
『じゃあ辰也が帰ってくるまで敦くんとおしゃべりでもしてようかな』
「あぁ、そうしてくれ。じゃあ行ってくる」
『行ってらっしゃい』

そういって室ちんはどこかへ行ってしまった。
用があるなんて聞いてねーし。
そもそもお姉さん来るなら言ってよ…!

『久しぶりだね、敦くん』
「うん。久しぶりー」
『元気にしてた?』
「元気だよー。お姉さんは?」
『元気すぎるぐらいだよ』
「…本当?」
『?』
「オレ室ちんと一緒にいるの長いからだいぶ分かるようになったんだよね」
『何を?』
「ポーカーフェイス」
『………』
「無理しなくていーよ。少し寝たら?」
『でも…』
「室ちん帰ってきたら起こしてあげる」
『………』
「お姉さん見てたら守りたくなるんだよねー。ってことで」
『きゃあ!?』

小さくて軽い体を抱き寄せて自分のベッドに寝転がせた。

「オレね、お姉さんのこと好きなんだよね。だから何でもいいから頼ってほしいわけ」
『敦くん…』
「年下はイヤー?」
『ううん。そんなことない』
「イヤじゃなかったら目つぶって?」

徐々に近くなるなまえちんの顔。
そんなオレを見てゆっくりと目を閉じていった。
優しく重なる唇。
少ししてから話して額同士を合わせた。

「覚悟してね。オレ絶対に離さないから」
『はい。覚悟しておきます』

ふわりと微笑んだ彼女を優しく抱きしめて、もう一度キスをした。


end

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