(隣にある体温)


ある日朝。
目を覚ましたら目の前には自分ではない誰かが隣にいた。
顔を上にあげると、そこには何故だか綺麗な紫色の髪を持った青年。

『(おかしいな…。一人で寝てたはずなのに…)』

秋田の3月はまだ寒い。
もともとここに住んでいる人なら慣れているだろうが…。
私も彼もそうではない。
長さが足りていないだろうベッドに縮こまって私を抱き枕にしている。
困ったことにがっちりとホールドされていて寝返りさえも打てない。
問題の彼は起きる様子は全くない。

『(寝顔かわいいな。そういえば見たことなかったや)』

いつもは見られている側だった。
なんだか少し新鮮な気分だ。
そうしている間にも時間は流れていく。
抱き枕にされているので自然と体と体が密着している。

『(あったかい…)』

もぞもぞと彼の広い胸に寄り添うと、彼は少し身じろいだ。

「ん…」
『(あ、起きたかな…)』
「んー…。…ん?」

しばらく、もぞもぞと動いていた彼だったが自分の腕の中にある"何か"に気づき目を覚ました。

「あれー…?」
『おはよう』
「んー。おはよー…?」
『起きたら抱き枕になってたからびっくりした』
「あー。夜中に目が覚めちゃってー…」
『うん』
「部屋出て歩いてたらここに来てたんだよねー。そしたら顔見たくなって」
『顔見たら眠たくなっちゃった?』
「そーそー。で、帰るのめんどーだったし。一回抱きしめたら暖かくて離したくなくなったんだよね」
『そうだったんだ。よく寝れた?』
「うん。おかげさまで。ありがとう」
『どういたしまして』
「起きたけど、まだ離したくない」
『ふふっ。敦くんあったかいね』
「そー?なまえちんのほうがあったかいよー?」
『そうかな。あったかいから安心する』
「寝るのー?」
『ほっとかれたら寝れるよ』
「オレも」
『じゃあ寝る?』
「一緒にねー」
『うん。お昼になったら起きてご飯食べに行こうね』
「賛成ー」
『おやすみ』
「おやすみー」

こんなオフの日もありだな。
そう思いながら隣にある彼の暖かさに包まれて、また眠ったのだった。


end

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